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コレクション: コレクション3

虎列剌予防民間の心得 - 翻刻

虎列剌予防民間の心得 - ページ 11

ページ: 11

翻刻

【右】 に罹(な)らさるは全(まつた)く消毒法(どくけしかた)の力(ちか)らに因(よ)る事(こと)を信(しん) す 同十一月上旬(おなしくじういちがつじやうじゅん)東京(とうけい)に帰り小石川小日向(こいしかはこびなた)のコレ ラ病院(びやういん)にありて病者(びやうにん)に接(せつ)し又(また)神奈川縣下三浦(かなかはけんかみうら) 郡鉈切村(これうなたきりむら)のコレラ病院(びやういん)に到(いた)りてコレラ病者(びやうにん)に 接(ちかつく)す然(しか)れども其/傳染(うつる)を免(まぬ)かれたるは全(まつた)く此消(このどく) 毒(けし)の功績(きゝめに)に帰(き)することを深(ふか)く信用(しんよう)す 前後(ぜんご)惣(すべ)てコレラ病者(びやうにん)に接(ちかづく)する時(とき)は予(わたし)の身体(からだ)に 石炭酸水(せきたんさんすい)を散布(ぬりつける)す又病者(またびやうにん)に接(ちかづく)する物品(しなもの)を取扱(とりあつかひ) ふ時(とき)は其物品(そのしなもの)に石炭酸水(せきたんさんすい)の散布(まちちらし)を為したりき 【左】 予(わたくし)同年九月(どうねんこゝつ)より十一月(じういちがつ)に至(いた)る迄(まで)にコレラ病者(びやうにん) を診察(みやくをみる)する前後少(ぜんごすく)なくも三百人(さんびやくにん)に下(くだ)らす其間(そのあいだ) 或(あるい)は死後(しご)を診断(みまい)し或(あるい)は 予(わたくし)の両手(りやうて)を嘔吐物(はいたるもの)又(また)は 大便(たいべん)にも汚穢(けがれ)し[衣服両足(きものりようあり)は勿論(もちろん)]或(あるひ)わ数十体(すじつたい)の 新(あたら)しき土葬埋没(どさうにうめる)の墳墓上(はかのうへ)にも屡々(しば〳〵)往来(ゆきゝ)すれ共(ども) 前説(まへ)の如(ごと)き此猛悪(このはけしき)の病毒(びやうどく)を免(まぬか)れたるは真(まこと)んい石(せき) 炭酸水(たんさんすい)の大効力(たいなるきゝ)なる事(こと)を信用(しんよう)す今世人(いまよのひと)の為(た)め に屡々(しば〳〵)くりかへし飽(あく)まで此(この)乃/良薬(よきくすり)の効験(しるし)を述(の) ぶ必(かなず)すしもコレラ流行時間(はやりのあいだ)には此藥水(このくすりみづ)を衣服(きもの) 上(うへ)に散布(まきちら)す又病者(またびやうにん)は勿論(もちろん)其衣服夜具蒲団(そのきものやぐふとん)一切(いつさい)

現代語訳

【右側】 に罹らなかったのは全く消毒法の力によることを信じている。 同年十一月上旬、東京に帰り小石川小日向のコレラ病院において病者に接し、また神奈川県下三浦郡鉈切村のコレラ病院に到ってコレラ病者に接した。しかしながらその感染を免れたのは全くこの消毒の功績によることを深く信用している。 前後を通じて、すべてコレラ病者に近づく時は私の身体に石炭酸水を散布した。また病者に近づく物品を取り扱う時は、その物品に石炭酸水の散布を行った。 【左側】 私は同年九月より十一月に至るまでにコレラ病者を診察すること、前後少なくとも三百人に下らない。その間、ある時は死後を診断し、ある時は私の両手を嘔吐物または大便にも汚し(衣服や両足はもちろんのこと)、ある時は数十体の新しい土葬埋没の墳墓上にも屡々往来したけれども、前述の如きこの猛悪な病毒を免れたのは真に石炭酸水の大きな効力であることを信用している。今、世人のために屡々繰り返し、飽くまでこの良薬の効験を述べる。必ずコレラ流行期間には、この薬水を衣服上に散布し、また病者はもちろんその衣服・夜具・蒲団一切に

英語訳

【Right side】 that I did not contract [cholera] was entirely due to the power of the disinfection method. In early November of the same year, I returned to Tokyo and came into contact with patients at the cholera hospital in Koishikawa Kobinata, and also went to the cholera hospital in Natakiri Village, Miura District, Kanagawa Prefecture, where I came into contact with cholera patients. However, that I was spared from infection was entirely due to the merit of this disinfection, which I deeply believe. Throughout this period, whenever I approached cholera patients, I sprayed carbolic acid water on my body. Also, when handling items that came near patients, I applied carbolic acid water spray to those items. 【Left side】 From September to November of the same year, I examined no fewer than three hundred cholera patients in total. During this time, sometimes I diagnosed after death, sometimes my both hands were soiled with vomit or feces (not to mention my clothes and both feet), and sometimes I frequently walked over the graves of dozens of freshly buried bodies, yet I was spared from this virulent disease poison as mentioned before - I truly believe this was due to the great effectiveness of carbolic acid water. Now, for the sake of the people, I repeatedly and thoroughly describe the efficacy of this good medicine. During cholera epidemics, this medicinal water must be sprayed on clothing, and for patients, of course, on all their clothing, bedding, and futons