みんなで翻刻ver1

コレクション: STAGE7

風俗畫報臨時増刊第百二十八號 洪水被害録(下) - 翻刻

風俗畫報臨時増刊第百二十八號 洪水被害録(下) - ページ 33

ページ: 33

翻刻

指揮(しき)し或は浸水民屋(しんすゐみんをく)に就き注意(ちうい)を与へ市役所(しやくしよ)よりは市川市長、 大垣助役 其他吏員総出(そのたりゐんそうで)にて水防に尽力(じんりよく)し夜に入り焚出米(たきだしまい)二石を 罹災者(りさいしや)へ配与したり又同日午前 小野新庄警察署長(おのしんせうけいさつしよてう)は馬瀬口堤防 欠壊したりとの急報(きうはう)を得るや直に巡査数名(じゆんさすうめい)を率ゐ出張し急防(きうばう)に 従事し県庁(けんてう)より竹部県属も出張(しゆつてう)したり又同川出水の為め大場前(おほばまへ) 第十号堤は前後左右水(ぜんごさきいうみづ)に取巻(とりま)かれ工事に着手中(ちやくしゆちう)なる野上組工夫 百五十名計りは其堤上にありて何処(いづく)へも逃げ行くこと能はず進(しん) 退谷(たいきはま)れる有様なりしかば工夫(かうふ)の親族等(しんぞくら)は工夫の身上(みのうえ)を案じ西ノ 番村の同川筋(だうかはすぢ)に至り救船(きうせん)を出さんとせしも益々増水(ます〳〵ぞうすい)の為め意の 如くならず或は喚(わ)めき或は叫(さけ)びして工夫等(こうふと)の方を眺め居りし其(その) 惨状(さんぜう)は実に見る目(め)も気の毒なりしと云々又別報に依ば同市(どうし)は当 日東部雪見橋を堺(さかい)として赤江川(あかえかは)より東田地方に及び稲荷(いなり)、柳雨(りうう) 町(まち)は勿論(もちろん)北新下金屋、東、西仲間、立、向河原、下水、清水(しみづ)、東田(ひがした)、 泉の諸町(しよてう)は一面の湖水(こすゐ)となり縦横(じうわう)に舟を通ずるに至り此地方(このちはう)は 未だ水害(すゐがい)に会(あひ)し事無かりし為め不意(ふい)の浸水(しんすゐ)に膽を冷し周章狼狽(しうしようらうばう) して為す所を知らず老幼(らうえう)一時に悲鳴(ひめい)せし有様は殆んど見るに忍(しの) びざりしと云ふ尚ほ神通川(しんつうかは)の増水(ぞうすゐ)は午後七時頃一丈五尺の多き に達(たつ)し富山市(とやまし)の西部なる七 軒(けん)、諏訪川原、鉄砲(てつはう)、西総曲輪(にしそうくるわ)の各 町に浸水(しんすゐ)し平吹、土居原(どゐはら)、桃井(もゝゐ)の諸町(しよてう)も亦多少の害(がい)を被りしが 安藤知事、吉見警部長等(よしみけいぶてうら)は絶えず各被害地(かくひがいち)を巡廻し県官郡吏(けんくわんぐんり)を 指揮(しき)して罹災者の救助(きうじよ)に尽力せり此他諸川出水(このたしよせんしゆつゐ)の為め被れる損 害甚だ少からず 高岡市(たかをかし)も被害多し挿圖(そうづ)は洪水後(こうずゐご)の景状なれども其(その)一 班(ばん)を窺ふを 得べし 各郡(かくぐん)の被害(ひがい)  県下(けんか)八ヶ郡中、最とも被害(ひがい)の多かりしは上新川(かみしんかは) 射水の二 郡(ぐん)なるが如し而して孰(いづ)れの郡村(ぐんそん)に至るも河川の流(ながれ)に瀬 せる処は田畑(たはた)、家屋(かをく)其の他に被害(ひがい)無きは稀(まれ)れにして其の田畑被 【右頁下段】 害の状況(ぜうけう)に至ては概(がいし)て之を三 階級(かいきう)に分つを得べく其の最(もつと)も惨な るものは肥土(ひど)を堀り洗ひし跡(あと)に砂土を流(なが)し以て永久(えいきう)に荒廃の地 となせるもの次は単(たん)に数尺の白砂(はくさ)を置けるもの次は本年(ほんねん)の作物(さくぶつ) を失ひしに止り明年(めうねん)の農作(のうさく)に些の損害(そんがい)を受けざる者 是(これ)なり今七 月廿一日の出水(しゆつすゐ)に於ける八ヶ郡被害計数(ぐんひがいけいすう)の最近調査を左に掲く 【以下被害表省略】      ●越中の水害実況記 越中 荒川千万紀 廿九年七月廿日 朝(あさ)七時頃より雨降(あめふ)り出し後二時 大風雨(だいふうゝ)となる夜 に入りて風(かぜ)は止みたり然(しか)れども雨はいよ〳〵はげしく廿一日雄(ゆう) 神川出水(じんがはしゆつすい)の報聞く       二塚村尋常小学校の危険 (挿圖参看) 廿一日 午前(ごぜん)十一時二 塚村(つかむら)尋常小学校授業中《割書:生徒七|十六名》林村孫右衛門 息急きかけ来りて孫(まご)貞次郎を呼び只今(たゞいま)春日村上の堤防破壊せし ゆへ早速帰家(さつそくきけ)せよと促す教員去(けうゐんさ)る程(ほど)の事なしと思ひ今授業最中(いまじゆけうさいちう) ゆへ授業後連れ帰(かへ)るべしといへとも左様(さやう)の暇ある折ならず今(いま)一 時間(じかん)立たさる中に此學校(このがくかう)も役場も《割書:學校と村役場と|一棟の建物なり》 皆水中(みなすゐちう)に浸さる へし其時(そのとき)は我孫(わがまご)のみならず生徒(せいと)一同の命危ふし早く業(げう)を中止(ちうし)し 【左頁挿絵中】 越中高岡市にて家屋流失の為め横田橋破砕するの圖 越中佐野河原に於て孤舟蛇の為に覆没するの圖