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コレクション: STAGE7

風俗畫報臨時増刊第百二十八號 洪水被害録(下) - 翻刻

風俗畫報臨時増刊第百二十八號 洪水被害録(下) - ページ 34

ページ: 34

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【右頁白紙左頁上段】 て帰らせ給(たま)ふへしと催促(さいそく)すれども教員尚疑ふ所ありて躊躇(ちうちよ)せし が孫右衛門は教員(けういん)の言を聞ずして貞次郎を引連(ひきつ)れ飛が如くみ立 ち去りぬやゝ暫(しばら)くすると階上女生徒(かいぜうじよせいと)の教員窓より向ひの村社神(そんしやしん) 明(めい)の森を見るに水烟高(すゐえんたか)く激浪を巻きて押(お)し来るを見て是(こ)は一 大(だい) 事(じ)よと階下(かいか)の教員に告く生徒(せいと)も一同に立ち騒(さw)ぎ見る間に学校(がくかう)へ 早や三尺計り水(みづ)は押し入りぬ皆階上(みなかいぜう)に昇りて泣くあり叫ぶあり 如何(いかん)ともする能はず水(みづ)は追々増加(おひ〳〵ぞうか)して学校階下の書籍器械(しよせきゝかい)は将 に流失せんとす一 同(どう)いかゝはせんと途方(とはう)に暮れ教員(けうゐん)といはとも 顔色(がんしよく)ある者なし階上(かいぜう)より大声(たいせい)に助けを呼ぶといへども村中我家(そんちうわがや) の始末(しまつ)に奔走し誰れ一人之に応(おほ)ずる者なしやかて林村(はやしむら)の方より 二隻の舟飛(ふねとぶ)か如く学校(がくかう)に漕ぎ寄せやう〳〵此船(このふね)にて村中水の至 らざる家(いへ)に生徒(せいと)を送り二度ひ学校(がくかう)へ来りし折は早や学校役場(がくかうやくば)共 に傾き将(まさ)に流失(りうしつ)せんとせる危機(きゝ)一 髪(ぱつ)の場合ひなりしか人命(じんめい)は皆 助かりぬ是れ孫右衛門が狂奔(けうほん)して催促(さいそく)せし庇蔭なり     ●巡査人命救助して橋と共に流る (挿圖参看) 廿一日午後四時 高岡市(たかをかし)中嶋町《割書:中島橋横田橋二橋の中間にあ|りて官道に連なれる町なり》家屋(かをく)七十六 戸 浸水(しんすゐ)七尺以上となり終(つひ)に六十九戸と土蔵納屋共五十餘 棟皆流(むねみなりう) 失(しつ)せり此折 中嶋橋(なかじまばし)は午後四時頃に墜落(ついらく)し横田橋猶存せりされど 諸人の通行(つかう)を止め唯一 兩名(れうめい)の巡査のみ在り此時家屋(このときかをく)に添ふて流 れ来る人あり巡査太(じゆんさふと)き縄(なわ)を投げ与へて之を助くる折忽(おろたちま)ち橋梁砕(けうれうさ) け橋と共に流れ下流米島(かりうよねじま)といふ所に至りやう〳〵助かれりとい ふ         ●川巴良神社の奥殿少しも損せずして       奈呉の浦に着く 中島橋(なかじまばし)の橋詰に鎮座(ちんざ)せる川巴良神社は一丈五尺の切り石垣(いしがき)にて 積み上けたる所にありて衆人(しうじん)の目を驚かす建設(けんせつ)なりしが其奥殿(そのおくでん) と云は六尺四方 位(くらい)にして四方 椽附(えんつ)きなり近頃修繕(ちかごろしうぜん)を加へ屋根欄 【左頁下段】 干に至るまで金具(かねぐ)もて飾(かざ)り彫刻物(ほりもの)なども種々手を盡(つく)しいと美麗(びれい) なる奥殿(おくでん)なりしか洪水の折 石垣崩壊(いしがきほうくわい)し神社其まゝ浮き流(なが)れたり 見る人是を惜(をし)まさるはなし此神殿(このしんでん)二里計流るゝ間た少しも傾斜(けいしや) する事なく些少(させう)も損所なくして伏木港(ふしきみなと)の向ひ六渡寺奈呉の浦(うら)に かゝりありしといへり       ●孤舟蛇の為に覆没す (挿圖参看) 廿一日 出水(しゆつすゐ)の折千保の川上(かはかみ)より一隻の舟茄子(ふねなす)及び畠芋茎葉とも に多く積みて下り来るに佐野川原(さのかはら)といへる所を過る時三尺 餘(あま)り の黒き蛇浪(へびなみ)に押され頭(あたま)を擡(もた)げ此舟を目懸(めがけ)け泳ぎ附かんとせしゆ へ船人棹(せんどうさを)を以て之を打すゑし途端(とたん)いかになしけむ船忽ち覆(くつ)かへ り茄子(なす)や芋(いも)は浮きて流(なが)れしも人は見えずなりぬ村人(むらびと)は浸水家屋 の上にありて之を見しといへとも如何とするも能はさりしとい へり        ●石川県下の水害 石川県(いしかはけん)の水害八月十三日午後三時十分石川県発の報(はう)に云く 県下加賀国 川々非常(せん〳〵ひぜう)に洪水橋落ち電信(でんしん)止り往来(わうらい)今に自由ならず 只今迄(たゞいまゝで)の報告に依れば石川郡 鶴来町(つるきたまち)手取川堤防决潰し家屋(かをく)三十 餘戸 土蔵(どぞう)二個、納屋(なや)二十 餘棟(よむね)流失、行衛不明(ゆくゑふめい)の者三十人計り、 牛九頭 流失(りうしつ)、全町(ぜんてう)八百餘戸の内六百 餘戸浸水(こよしんすゐ)中にて床より五尺 位 侵入(しんにふ)せし所あり参事官(さんじくわん)を急行せしめたり其他手取川筋(そのたてとりかはすぢ)所々决 潰し石川郡の平坦地各村(へいたんちかくそん)及び右岸 能美郡(のみごうり)沿川村々大体 浸水被害(しんすゐひがい) 多し美川町(みかはてう)小学校流失せり犀川筋堤防(さいがはすぢていばう)は石川郡にて四ヶ村破壊(そんはくわい) し浅野川筋堤防(あさのがはすぢていばう)は石川郡にて三ヶ村 河北郡(かはきたごうり)にて三ヶ村 破壊(はくわい)し橋 の落ちたる所多し森本川筋(もりもとかはすぢ)は四ヶ所决潰し大聖寺川(たいせうじかは)も破堤あり 目下吏員(もくかりゐん)を各地に派し取調中 同四日午前四時三十分 発(はつ)の第二 報(はう)には  県下能美江沼(けんかのみえぬま)二郡今 漸々 電信通(でんしんつう)じてれども行通(かうつう)は猶杜絶し詳況(せうけう)は知らざるも能美郡(のみぐん)