翻刻
効(こう)ありと云(い)ふ○樋口(ひぐち)の湯(ゆ) 仲町(なかてう)に在(あ)りもと醫王寺(いわうじ)の湯(ゆ)と
称(せう)す寺(てら)を大久保(おほくぼ)に移(うつ)せし後(のち)樋口(ひぐち)忠助(ちうすけ)此地(このち)を得(え)て浴室(よくしつ)を構(かま)
ふ○勘兵衛湯(かんべゑゆ)○尾張屋(をはりや)の湯(ゆ)《割書:野村庄|右衛門》皆(みな)仲町(なかてう)に在(あ)り○野中(のなか)の
湯(ゆ) 小澤(こざわ)の北上野山(きたうへのやま)の麓(ふもと)なる田畝(たんぼ)の中(なか)に湧(わ)く古来(こらい)晝夜(ちうや)湧(ゆ)
出(しゅつ)すれども遂(つゐ)に浴室(よくしつ)を構(かま)ふる人(ひと)あらざりしに近年(きんねん)小松(こまつ)精(せい)
一(いち)此地(このち)を開(ひら)き深(ふか)く泉源(せんげん)を探(さぐ)りて一|泉(せん)を得(え)又|機関(きくわん)を設(もふ)けて
一泉を湧出(ゆしゆつ)せしめ共(とも)に浴室(よくしつ)を構(かま)へて浴療(よくれう)に供(けう)す
○温泉(おんせん)性質(せいしつ) 各所(かくしょ)に湧出(ゆしゆつ)する温泉(おんせん)大小(たいせう)深浅(しんせん)各々(おの〳〵)其差(そのちがい)なき
に非(あら)ずと雖(いへ)どもすべて清徹明浄(せいてつめいぜう)にして臭氣(しうき)なく其(その)性分(せいぶん)功(こう)
用(よう)に至(いた)りては水湯(みづゆ)を除(のぞ)くの外(ほか)各泉(かくせん)大同小異(だいどうせうい)皆(みな)其(その)味(あじわ)ひ苦(にが)く
且(か)つ醎(しほば)ゆし蓋(けだ)し此(この)温泉(おんせん)は含鹽鑛水(がんゑんくわうすゐ)にして其中(そのうち)多量(おほく)の格(こ)魯(ろう)
兒(る)亞爾加里(あるかり)及(およ)び格魯兒(ころうる)土類(どるい)少量(せうれう)の硫酸(りうさん)鹽類(ゑんるい)を含有(がんゆう)せりと
いふ其(その)温度(おんど)は湧出(ゆしゆつ)の時間(じかん)に随(したが)ひ又(また)その泉窖(ゆつぼ)に随(したが)ひて少差(ちがひ)
なきに非(あら)ずと雖(いへ)ども大凡(おほよそ)皆(みな)沸騰點(ふつとうてん)以上(いぜう)に達(たつ)せざるはなし
嘗(かつ)て司薬場(しやくぜう)に於(おゐ)て教師(けうし)マルチン氏(し)の分析(ぶんせき)せし所(ところ)の定量表(でうれうへう)
あり即(すなは)ち左(さ)に出(いだ)す
鑛水(くわうすい)一千|立方(りつぽう)センチメートル即(すなは)ち一リートル中|左(さ)の
成分(せいぶん)を含(ふく)む
格魯兒(ころうる)曹胃母(ほどりゆむ) 三、七九〇〇
格魯兒(ころうる)麻倔涅叟母(まくねしゆむ) 二、三三三〇
格魯兒(ころうる)剝篤叟母(ぼつとしゆむ) 一、八一〇〇
格魯兒(ころうる)加爾叟母(かるしゆむ) 一、七六七〇