翻刻
一同に推寄大手の大将帳場に懸かり炊(タキ)出を
云付跡宿の如く穀売相場印形取立
居る其処へからめての大勢右往左|往(ヲウ)に
入乱れ直に山伏法花堂の宅へ押込み
法美が仏に成ならはとくそを味噌に悪口し
とつこたかせと踏こんで三 ̄ン鈷(ゴ)みぢんに
ふみ毀(カホ)し鈴錫杖もいらばとてあら 沢ふ
動の荒たる如く火えんを出して扣き立
のうたくやたらに荒び立千両箱の底扣き
うんたら〳〵とかんまつめあびらうんけと
蹴飛して散々さくだうち毀しれんけん
ばやとふんばつてさんげ〳〵に凡天を先に
たてはや日も西の峯に入螺貝ふかぬ計也
直に保袋や武左衛門宅へみたれ入屋台み
じんに相かわし金銀財宝衣ふくまで
むせうやたらにきりさばき保袋のはらも
現代語訳
一同に押し寄せ、大手の大将帳場に掛かり、炊き出しを言い付け、跡宿のごとく穀売り相場・印形を取り立てている。そこへ搦め手の大勢が右往左往に入り乱れ、直ちに山伏法花堂の宅へ押し込み、「法美が仏になるなら、とくそを味噌に」と悪口し、「とっとと出て行け」と踏み込んで、三鈷をみじんに踏み壊し、鈴・錫杖も要らぬとて、あら沢山の荒れたるごとく火炎を出して叩き立て、
うんたくやたらに荒び立て、千両箱の底を叩き、「うんたらうんたらと、かんまつめ、あびらうんけ」と蹴飛ばして散々さくだ打ち毀し、「蓮華ばや」とふんばって懺悔・懺悔に、梵天を先に立てて、はや日も西の峯に入り、螺貝を吹かぬばかりなり。直ちに保袋や武左衛門宅へ乱れ入り、屋台をみじんに打ち合わせ、金銀財宝・衣服まで無性にやたらに切り裁き、保袋の腹も