翻刻
着たるどてらをぬぎで捨小袖と着替或はきり
捌き引|裂(サハ)き山の如くに積重夜着蒲団迄
取出し小山の様積上て四方ゟ火お付て忽灰
にぞなしにける続て平吉宅を焼払名主惣
吉宅おも踏散し善兵衛隠居の所へ鳴込み
けれは有金の金財布ごて取出し銘々弐分宛
配りけれはまだるしと思ひけん財布かなぐりう
ばい取何国共なく逃失けり既に十月三日の夜鶏鳴の頃
至りけれは諸方に隠れ忍し盗賊共渡りに
舩と乗集り天慶の一乱に伊予守純友に
賊徒の付しもかくやらん通る村々随而最早
八わたへ付時は幾千人共難計田畑山野のわ
かちなく竪一里横拾丁程の間一面に成て
通りける既に八幡に着しかば穀屋久次郎宇
右衛門兄弟打潰し依田七郎兵衛の宅へ押篭
捜窓障子も唐紙もさんごみじんに打砕き