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かゝる処に伊藤【「東」の誤りカ】祐安大勢に押立られ心ならす五町斗落たりしか
とある高みに懸上り臆病至極の奴原共何方迄逃るそと
味方の勢を励ましかへせ〳〵と呼りけれ共引立たる勢の癖なれ
は耳にも更に不聞入我先と引て行祐安心に思ふ様賤しくも
伊藤【「東」の誤カ】殿ゟ先陣の大将給り一軍も利を得す何の面目有
てか人々に対面せんいさ討死と思ひ切駒の手綱を引かへし
大音上て名乗様是は伊東の家の子に加賀守祐安といふ
者也軍の恩を報せん為討死するそ我とおもはん者あらは
懸れ〳〵と呼はりける爰に渋谷上総介国重此言葉を聞付あら
やさしくも帰させ給ふ物哉是は克【=重責を担う?】北原か郎等渋谷上総介迚音に
聞せ給ふらん参候と云侭に何れも馬より飛て下り打物抜て
戦ける国重か郎等主を打せしと弓手馬手ゟつつと寄むすと
組て上を下へとかへしける祐安元より大力二人の者をかひつかんて
かしこへ投捨国重と組て取て押へ首を掻んとする処を国重か
弟軍八国猶落重て柄も挙も通れ〳〵と三刀指て弱る
処をはねかへし終に首を打落ししすましたりといふ儘に勝鬨
とつと上陣所をさしてそ引にける此人々の手柄のほと天
晴味方の勢ひやと皆々打寄て盛しけり
一去間加賀守か郎等一人討洩され新次郎に近付てか様〳〵と告け
れは新次郎是を聞て扨は祐安討死とや両大将の者共か一人
残り古郷に帰り詮もなし附隨ふ者共一人も不残落行て
義祐の御先途を見継へし暇取する是迄と取てかへし大勢