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難有御意哉左あらは暇を申して腰の刀を引抜て咽のくさりを
掻放し朝の露と消にけり此上は力なしと首を打落す御
大将を初として見る人聞人おしなへて袖を濡さん者はなし
か様に皆打死仕あなたこなたの時刻を延る其隙を大将
義祐は乕【虎=異体字】口の難を遁れ都の郡に落らるゝ忠平此よし
御覧して勝に乗て長追は悪かるへし先引取やもの共と下知を
し成て引給ふ去程に兵庫頭忠平は伊東勢に討勝飯野の城
に引かへし定て義祐今度の恥を清めん為二度討て懸るへし
油断するなと宣ひて遠見を出し忍を入御用心は隙もなし
川上上原を初として家老の面々申様臆病神の付たる伊東
勢何ほとの事か仕出へし此勢ひに境目を打越御働候はゝ
手に立ものは候ましと勇進て申ける忠平此由聞召此義尤乍去
困犬虎を喰究鼠却て猫を嚙と云事あり伊東も名に
有兵也侮ては悪かるへし縦亡といふ共味方大勢討るへし時
節を待と宣ひて境目堅く相守月日を送せ給ひけり
是は扨置伊藤【「東」の誤カ】義祐は木崎原の合戦に家子郎等不残
打せつゝ今一度境目を打越あまたの城を攻落し会稽
の恥を雪んと種々の智略をめくらせ共味方の臆病神
に迷はされ妻子を隠し色めきて落支度をそしたりける
野尻の城主福永丹波守は此由を熟しと見て伊東殿
御家滅亡すへき時節此節也度々諫言しけれ共禁言耳
に逆ふ習にて義祐大に腹を立物毎つらく振舞三年か