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福永分際思ふに左こそ有へし時刻相延しても何程の事か仕出す
へきと大様に返答す稲津川崎是を聞頓て心得たり福永は
親類の事なれは同意すると覚たり二心有奴原を一刻も助け
置方々引合募りてはことの大事たるへし先んする時は人をせいす
とは此時成へし早打立や者共と取ものも取あへす野尻の城に
押寄二重三重におつ取巻鬨の声上にけり鬨静れは恒
高矢倉に馳上り何者なれは狼藉や名のれ聞んと申ける
寄手の方より声々に福永叛反隠なし無用の事をいはん
より腹を切とそ申ける恒高から〳〵と打笑我等か館の福永
は旁か知る如く仁義を守る勇士にて伊東の御家に二人共
なき忠臣也逆心なとゝいふ事は不思寄次第也おゝやかて心
得たり飯野にまします兵庫頭忠平は智恵深き人なれは先福
永を退治して其後伊東殿御家を安々と亡さんする其為の
謀と覚たり敵の謀を不知して亡給はん義祐の御運の程こそ
然し【=なるほどそうだ】けれ危しや世中後先立人間の老少不定さためなけれは
こそ誠なれ何事も徒事に方々よみし物と思ひなは念仏
申てたひ給へ恒高か手并【手並の意?】の程今日あらはして見せ申さん
と弓鉄砲を放かけ少時ときを移しける表に進む兵百
人余り射しらまされて少し色めく処に一度にとつと切て出
火花を散し戦ける実も寄手は大勢にて荒手を入かへ
責けれは城の兵共残少なく討れける恒高此由見るよりも今
は防に叶ましと城の中につつと入嫡子兵太経房を近付