翻刻!地震・災害史料

コレクション: NDL地震・火山

鶯宿雑記. 巻199-200 - 翻刻

鶯宿雑記. 巻199-200 - ページ 109

ページ: 109

翻刻

 兵有目と目をきつと見合こは無念の次第かな恒高壱人に切立  られ足をためす見くるしや鬼神にてもあらはあれ余すな  といふ儘に二人の者共真しくらに打てかゝるを恒高きつと見  て大勢の其中に方々の残り留るは類ひ少き兵哉いさや  勝負を決せんと二人を左右に相受て追つ巻つ戦けるか奥  野々藤太太刀を打折て怪む処をつと入て真向二ツ割に  そしたりける源次透さす丁度と打ひらりと逃【迦ヵ=外】しそふなく諸  膝なひて切落されかしこへとうと倒れける二人か首を打落し  太刀の先に貫き軍はかくこそする物よ掛れ〳〵と呼はりける  左右な近付そ遠矢にそ射たりける恒高も心は猛く勇め共  其身鉄石にあらされは数ケ所の疵を蒙りて遁んもの故に腹  一文字にかき切て朝の露と消にけるかの恒高か手柄のほと皆  感せぬものは無りけり 一去間野村備中守重綱は忍の者共都の郡に附置ける無程  馳来り稲津川崎大将にて福永館へ大勢取掛し由申  ける野村聞てとやせん角やあらましと案し煩居たりしか只  世の行末を見る時は今日は人の身の上明日は我か身の上そかし  迚も死すへき露の身を義理を守福永と共に腹をかき切  て死出の山路を諸共に手に手を取て打越て立反【たちかえる】も難面【つれなく】も  物語して慰んと我と思はんものあらは供して来れと云儘に  立出んとしたりしか実誠忘れたり妻や子共を残し置人手  に掛んも無念也差殺さんと思ひつゝ常の所に立帰り女