東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: 学校教材発掘プロジェクト 4

絵本写宝袋 9巻 4之巻 - 翻刻

絵本写宝袋 9巻 4之巻 - ページ 13

ページ: 13

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【右丁】     尭(げう)の御治世(ごぢせ)に敢諫(かん〳〵)の鼓(つゞみ)有(ありし)事 尭帝(ぎやうてい)は帝(てい)嚳(こく)の子(こ)なり至聖(しいせい)にして恭(うや〳〵し)く克(よく)俊徳(しゆんとく)を明(あきらか)にし たまへば九族(きうぞく)【左ルビ:しんるい】既(すで)に睦(むつまし)く黎民(れいみん)時(これ)雍(やわらげ)り其 富(とみ)天下をたもち 尊(たつと)きこと天子の御 位(くらい)なれども御 身(み)を驕(おごり)たまはず茅(かや)を以(もつて)屋(いゑ)を 覆(ふき)土階(つちのきざはし)三 等(だん)蒲草(がまくさ)を席(むしろ)とし衣服(いふく)紋(もん)なく舟(ふね)車(くるま)不飾(かざらず)万事(ばんじ) 倹約(けんやく)にし給ひ財用(ざいよう)の費(ついゆ)ること無(な)ければ年貢(ねんぐ)をゆるくして百姓(たみ) を恵(めぐ)みたまふ一 民(たみ)の飢(うへ)たるを見ては我(われ)これを飢(うや)すが如(ごと)く一 民(たみ) の寒(こゞへ)たるを見ては我(われ)これを寒(こゞやか)すが如(ごと)く思(おほし)めしける程(ほど)に万民(ばんみん) これを崇(たつと)み親(したし)むこと父母(ちゝはゝ)のごとし民(たみ)安(やす)く業(なりわひ)を楽(たのし)み諸侯(しよこう)降伏(きぶく) し敢(あへ)て恨(うらみ)【限は誤】謗(そしる)ことなし又 敢諫(かん〳〵)の鼓(つゞみ)をもうけて曰(のたまは)く朕(われ)君(きみ)と 成(なり)て民 労役(くるしみ)なきや朕(ちん)が身(み)に過(あやまち)なしやもし朕(われ)に過(あやまち)有て 民に苦(くるし)み憂(うれふ)ることあらば此 鼓(つゝみ)を撃(うつ)べしと仰(おゝせ)出されしか〝共 帝(みかど)に諫(いさ)むべき過(あやまち)なく民(たみ)に訴(うつたふ)へき憂(うれへ)なければ遂(つい)に鼓(つゞみ)は有 ̄レ 〝共 撃(うつ)人なく諫鼓(かんこ)はおのづから苔(こけ)深(む)して四海(しかい)泰平(たいへい)国土(こくど)安穏(あんおん) に治(おさま)り雨(あめ)壌(つちくれ)を動(うごか)さず風(かせ)枝(ゑだ)をならさず目出度(めでたき)御代(みよ)なりける 【左丁】 諫鼓之図(かんこのづ)  【図】     中心ナルハ巴ニアラズ     珠ナリコンロク仕立 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 昔(むかし)より此図を画(ゑかく)事 朗詠集(らうゑいしう)の諫鼓(かんこ)苔(こけ)深(ふかふ)して鳥(とり)不驚(おどろかず)と云 詩(し)によつて画(ゑかく)者か本 文のごとくならば麤【麁は俗字】なるてい也 尭王(けうわう)は古今(こゝん)にすぐれたる聖人(せいじん)にてましませばかくおごる形(かたち) なるべからずたゞ帝王(ていわう)の器なるを見(み)せん計(はかりこと)なるべし詩(し)の心は尭(ぎやう)王 民(たみ)の患(うれへ)を奏(そう)すれとも曲(まがる) 臣(しん)上(かみ)に告(つげ)ず帝(みかど)なげきたまひ患(うれひ)有ば此 鼓(つゝみ)をうつべし鳴(なる)ときはみづから聞てことはらん とて門外(もんくわい)に太鼓(たいこ)を立たまふかくて鳴(なり)のしばらくも止(やむ)時なし世 治(おさま)り訴(うつたへ)申事なきゆへ うつ人なし故(かるがゆへ)に太鼓(たいこ)はあれどもあたりに寄(よる)人なきゆへいたづらに苔(こけ)むしておのづから諸(しよ) 鳥(てう)のすみかとなりたるてい也しからば庭鳥(にはとり)にかぎるべからず太鼓(たいこ)の辺(あたり)に諸鳥(しよてう)を画(かく)べき歟(か)