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【右開】
術なり医(い)法の中にも痘(ほうそう)に鈎(かぎ)らす妙術奇法(みようじゆつきほう)と唱(となへ)
る法は多くあれども此法に及ふ法なしいかな
る妙術奇法といへども一人に功あれば一人に
害(がい)あり一病に得(う)る事あれば一病に失(しそこない)あり百的(ひやくにんが)
百中(ひやくにん)の金功をうること能(あた)わす故(ゆへ)に此牛痘法は
古今/無二(ふたつなき)の法なる事を知るべし其無二の法な
る事を一諸侯(あるおだいみよう)深(ふか)く感(かん)じ玉ひて厚(あつ)き仁恵(おめぐみ)より和
蘭人に嘱(おゝせつけ)られて痘苗を貢舶(もちわた)り皇国(につほん)の重宝(たから)と
なれり其由来(そのゆらい)は既に芸州(あきのくに)の種痘家(うへて)三宅氏の著(あらわ)
せる引痘喩俗草(うへぼうそうさとしぐさ)と云(い)へる小冊子(こざうし)に見えたり其(その)
【左開】
略(りやく)に曰(いわ)くヿ此引痘の種は元来(くわんらい)西国(さいこく)の或る御大名
の御骨折りにて和蘭より御取奇に相成それを其
姫君(ひめぎみ)にうゑさせ玉ひて其種を末〳〵へ下された
るより日本国中に/弘(ひろ)かりたるものなり種とい
ふは即(すなわ)ち発出(はへいで)たる痘(ほうそう)の良漿(よきうみ)なり己(わ)が子も人の
この漿を種として大厄(だいやく)を逃(のが)れたれは又人の子
にも己が子乃漿を伝うべき道なり且(そのうえ)是を採(とり)て
一切/害(さわり)にならぬ物なれば醫もそれを採(とり)伝(つた)へて
始終(しじう)たえぬ様にする事なり万一その子に毒(どく)な
どありて種にならぬもあればとりて人々に傳