翻刻
【右丁 上段】
これ王導(わうどう)か従(いと)
弟(こ)なり義士(ぎし)【之】七
歳(さい)にして書(しよ)を
よくし十三/歳(さい)にて
父(ちゝ)の秘(ひ)しおきたる
前代(ぜんだい)筆跡(ひつせき)の聖(せい)
たるものをひそかに
うかゞひ知(しつ)て今猶(いまなを)
善書(ぜんしよ)の名を遺(のこ)
せりしかのみならず
文章(ぶんしやう)を玉(たま)をつら
ぬかるがゆへに天(てん)
下(か)の人/奇才(きさい)を称(せう)
【左丁 上段】
歎(たん)す其頃(そのころ)三公(さんこう)の司(つかさ)
にありし郗鑒(ちらん)【注①】といふ
人こふて女(むすめ)に婚(こん)す
のちに右軍將軍(ゆうぐんせうぐん)
會稽(くわいけい)方の内夫(ないふ)と
いえる官(くわん)に昇(のぼ)り
しとなり古今(こゝん)に
能書(のうじよ)あまた有(ある)が
中(なか)に逸少(いつせう)をもつて
筆法(ひつほう)の神(しん)とす
將(また)息(そく)王献之(わうけん[し])父(ちゝ)に
次(つい)て能書(のうじよ)也/故(ゆへ)與(よ)
に父子(ふし)を二/王(わう)と嘆賞(たんしやう)【注②】す
【注① 「鑒」の字形は「監」ヵ。振り仮名「らん」は「覧」との混同ヵ。「郗鑒」の読みは「ちかん」】
【注② 「珎賞(ちんしやう)」ヵ】
【右丁 下段】
可(べき)_レ随(したがふ)_二雅俗(がぞく)之(の)所(ところに)_一_レ好(このむ)也(なり)塗物(ぬりものゝ)器品(きひん)
商賣(しやうばい)者(は)膳椀(ぜんわん)坪皿(つぼさら)平皿(ひらさら)食次(めしつぎ)湯(ゆ)
桶(たう)片器(へぎ)折敷(をしき)盞臺(さんだい)盃(さかづき)吸物椀(すいものわん)
重箱(ぢうばこ)食籠(じきろう)提重(さげじう)行厨箱(べんとうばこ)行器(ほかい)
手箱(てばこ)文匣(ふみばこ)類(るい)黒塗(くろぬり)朱青漆(しゆせいしつ)蒔(まき)
繪(ゑ)溢掛(いつかけ)沈金彫(ちんきんぼり)等(とう)也(なり)瀬戸物屋(せとものや)は
【左丁 下段】
南京(なんきん)高麗(こうらい)唐津(からつ)平戸(ひらど)員部(いんべ)御(お)
室(むろ)等(とう)之(の)焼物(やきもの)也(なり)扨(さて)大路(おほぢ)徑([こ]みち)之(の)小商人(こあきんと)
手遊人形(てあそびにんぎやう)飴(あめ)粔粧(おこし)煎茶(せんじちや)餅菓子(もちぐわし)
枇杷(びは)鬼灯(ほうづき)桃(もゝ)瓜(ふり)西瓜(すいくわ)柿(かき)蜜柑(みかん)其外(そのほか)
時節(じせつ)之(の)品々(しな〴〵)或(あるひは)小間物(こまもの)魚類(ぎよるい)前栽(せんざい)
野菜(やさい)等(とう)之(の)擔賣(になひうり)又(また)者(は)籃輿舁(かごかき)