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【右項】
引籠り住居せしか自火にて家焼此琵琶一ッ抱て
出たりけるに道具は残りなく焼失てけり夫より
次第に貧しくなり後は小丹生浦刀祢茂兵衛が家にて
果ける也かく貧しく成て残りたる道具もみな
売代なしけるが此琵琶は無下之者の手に渡さむも
口惜とて山本簡齋に売てけり其時贈答之
連歌なと有とかや其頃三崎宗庵は琵琶を
好きて彼有賀か家栄へけるほとは常に行
所望して弾けりかくて年月をへて後簡齋
少し心地あしかりけるに宗庵を呼て縁を
【左項】
見て貰はんとて言い遣りけれは則宗庵来りて
座につくゟ外の事は得云わて彼琵琶の事を
噺出し今は何方に有やらん惜しき事也と云けれは
簡齋夫こそ我方に有とて取出して見せしかば
宗庵涙をなかし歓事かきりなし今一度此琵琶
を見まほしく思ひしにかく手にふるゝ事の不思議
さよとてかきならし平家をかたり出したりけれは
簡斎も同しくしわかれたる声にて語出し興に
入て良久しくかきならしけるかさらはとて暇
申て帰るとて終に宗庵は縁を伺ふ事をわすれ