翻刻
銭塚鎮守の跡宇賀塚比兵寺公家の谷内氏神白山宮
御神躰行基作の千手観音のよし其時の寺号とて
大乗寺といふて浄土宗の小庵あり能き村也其比寺
百姓の筋目多く宇出津へ出て有しといへり寺分村せ
し此所は此寺百姓なりし名也神和住村近し城跡
あり
山里の旅寝に凌大法師の片寄とやらおも
ひ〳〵我もかく
あわれけに猿(マシラ)なくなる更行霜夜
又宇出津ゟ波並へ行には間に藤波村とて有壱里の間に
所々別れて有村也真嶋といふ風景なるには王子の社也
灘浜といふに大宮権現有祭礼毎歳三月二日三日也御幸有
此日を藤波の樽祭といふ百姓ら一樽出こと百姓一樽天窓振(アメマフリ)と
一樽神ノ前に備ふ神主祈念済と其三つの樽を我先人
先と争ひ村中を振歩行なり其後は一酒一滴もなく
なりて又〳〵外なる酒来て盛酙み遊ふことなり
是を藤波の樽祭といへり此両社の御神躰は山入に有し
古寺の兵乱の時役流せしか此儀に寄給ひし御神と