みんなで翻刻ver1

コレクション: STAGE2

安政見聞誌抄 - 翻刻

安政見聞誌抄 - ページ 10

ページ: 10

翻刻

 髪ハ残りなく焼落頭面より半身《ルビ:黒熏|くろくすぼり》にして焼《ルビ:爛|たゝれ》たる《ルビ:容|さま》ハ  実に幽霊成べし新助委細を問に妻やすか云やう火ハ段〻  燃来りて梁の半迄焼しゆへ押付たる所甚軽し漸火中を  《ルビ:脱|のかれ》たりと語りぬ是等ハ未命運の尽さるものにして最めて  たし凡今度の騒乱に如此《ルビ:脱|のか》れたる又ハ井の中に落入火災  を逃たるもの此外種〻珍説あまた有といへとも物繁きを以  些に其一二を挙るのミ 一深川富士見橋に二の組鳶人足善五郎と云ものあり右地震にて  其家潰しか妻子おバ救出しけるに幸ひに怪我もなし然るに    隣りに物音高く聞へしかハ鳶口を携急駈行見るに正に小  笠原左京侯下屋敷の玄関を残し館中残なく崩潰其中に  泣さけふ聲切に聞へしかバ力に任セ大木板瓦等を刎除け  侍女九人を救出し猶又散乱の中より女十二人を出しけるが老女  の云やう早く妙月院殿《割書:城主の|御母公也》救けくれよと云に善五郎心得  て急き潰家の中へ潜入漸尼公を尋索め救出し侍女に  《ルビ:傳|かしつか》【傅の誤記ヵ】セ玄関に安座し進らせ夫より茶の間其外三ケ所の火を  消し又十一人を救出す但此内五人即死なり此時御上屋敷より  速馬到来し御恙なきを賀し奉るに右善五郎に救れたる