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コレクション: STAGE2

安政見聞誌抄 - 翻刻

安政見聞誌抄 - ページ 26

ページ: 26

翻刻

 東西に出たり是必揺返しならんと彼雲を見たる輩にハ家財  を廣原にはこび身を竹林にひそめ居る果して其夜も又大  地震有しと語たるを覚へ居て忘ざりしを彼二日に其雲の顕  れたるを見て思はす申たる也とかたりぬ夫子ハ童揺を伝し班  固ハ巷談(こうたん)を因とす俗説も棄へきにあらす況や実地の現談  をや野夫にも功の者とハ是等の事成へし 一甲州の絹賈人茂助といへる人去十月二日中仙道熊谷宿を立て江  戸へ入らんと道を急きけるに其日は何とやらん路次も果とらす浦  和宿にて日ハ暮けれ共家業の都合あしけれハ道中をいそき蕨  宿板橋をも打すきて鶏声か凹まて来りし頃ハ亥刻にして猶  も道をいそく所に北東の方より南方へかけて黑気の中に青  光あるもの烈風のことくひゝき見たり飛さるよと見るうちに  忽動揺の音すさまじく恐怖して地上に倒たる節大地震に  て近辺の家倉の崩落るに実に五臓も引裂かと思ふはかり  にして夢のことく更に前後をしらさると也此黑気ハ地震の前兆  なられかし右と同容の空中を通たるもの浅草にて見たる人  有是同物かしらす 一江戸御城の見附数三十六ヶ所あり此度の地震にて何れも破