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コレクション: STAGE2

安政見聞誌抄 - 翻刻

安政見聞誌抄 - ページ 30

ページ: 30

翻刻

 くハんとする時ハ父子共にこゝにて焼死すへし我よしや片腕を  失ふともおめ〳〵こゝにて焼死なんハいふかびなく思ハるれハ汝こ  の腕を切捨くれよと云にせかれハ悲嘆にせまり何条父に刃を  中らるへき此義ハ免したまへと詫けれハ秀平いかり此場に臨  て父を非業に殺すこと子たるの道にあらす急切捨よ其上にて  為容有疾くと急しける故忰ハ泣〻刀を抜えいと声かけ腕を  切落しけるに父ハ苦痛の体もなく火の中を潜り抜親子もろとも  危を脱れたり此事太守聞し召給ひたとひ父の身に刀をあつる  共一命を救る事尤也とて弐人扶持を加増の上数多の褒賞を  賜りしとぞ 一明暦三酉年正月十八十九日江戸大火にて焼亡十万八千人有依之  本所に諸宗山無縁寺回向院を建立在て右追福を修せしめ  給ふ是を莫大に思ひたるに今度の騒乱ハ右の高より多しと  いへる人あり何にして其数を知るそと尋るに御当地中諸宗  の寺院幾千あり其塔中を加へて一寺に五人ツヽ葬る時ハ二十  万余と成と云〻是宜なる義ゆへ尚深く考見れハ実にも明暦  より遥に多きを悟り初て驚しなり右震火鎮りてより死体  を幾つともなく莚に包又四斗樽に入車にのせ其《ルビ:香花院|たんなてら》に