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コレクション: STAGE3

安政風聞集 上中下 全 - 翻刻

安政風聞集 上中下 全 - ページ 39

ページ: 39

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【右丁】 根坂下(ねざかした)此辺潰家あり聖堂 脇(わき)桜(さくら)の馬場(ばゝ)は近年(きんねん)大筒(おほづゝ)鋳立場(ゐたてば)となり高(かう) 低(てい)広(くわう)狭(きやう)の小屋懸(こやがけ)幾棟(いくむね)となく大破に及ぶ御茶(おちや)の水(みづ)辺(へん)前田(まへだ)内田(うちだ)屋敷悉 くそんじ火消(ひけし)屋敷長屋少々崩るゝ水道橋(すゐだうばし)外(そと)青山(あをやま)矦屋敷少々そんじる 水戸様御 館(たち)少々破損もみの木折るゝ事 夥(おびたゞ)し  ◯ 或(ある)屋敷の小者(こもの)火急(くわきう)なる主用(しゆうよう)にて風雨の最中(さいちう)聖堂下(せいだうした)の川端(かはばた)を   来(き)かゝりしが折(をり)からどつと後(うしろ)より吹下(ふきおろ)す烈風(れつふう)に赤合羽(あかがつは)を着(き)たるまゝ   さでなどにてすくひ取(と)らるゝごとく中天(ちうてん)へ吹上られはるかに飛(とん)で水中へ   投落(なげおと)されたり然れども此僕(このぼく)少しく水練(すいれん)に達(たつ)したれば其儘(そのまゝ)泳(およぎ)て   稍(やゝ)一町半も来たらんと思ふ処ざは〳〵と草(くさ)の手(て)にさわりければ是に取   つき岸辺(きしべ)に這上(はひあが)り四辺(あたり)を見るに暗々(あん〳〵)として只尺(しせき)も分(わか)ず#1折から光(ひか)る   電光(でんくわう)によく〳〵爰(こゝ)を見(み)定るにお茶の水の川なれば草によぢ笹(さゝ)に 【左丁】    すがり辛(から)くして往還(わうくわん)へ上(あが)り見るに桜(さくら)の馬(ばゝ)場の下なりとぞ   ◯ 按(あん)ずるに漢土(もろこし)明(みん)の初(はじめ)山東(さんとう)新城(しんじやう)に王氏方(わうしはう)といふ者あり未(いま)だ   妻(つま)もなく独身(とくしん)なりしが或日(あるひ)大風吹て天(てん)闇(くら)き事 暗夜(あんや)の如し暫(しば)   時(らく)有て風 止(やみ)空(そら)晴(はれ)れたるに風の吹集(ふきあつ)めたる塵(ちり)の中に一個(いつこ)の美女(びぢよ)居(ゐ)   たり其齢(そのよわひ)十八九計なり此女(このをんな)王氏方(わうしはう)を見て告(つげ)て云 我(われ)は外国(ぐわいこく)の者なるが   今日(けふ)車(くるま)に乗(のり)て道を行所(ゆくところ)に大雨に逢(あふ)て吹上(ふきあげ)られ爰(こゝ)に落(おち)たりと云   其後(そののゝち)終(つひ)に王氏方(わうしはう)と夫婦(ふうふ)に成たりと清人(しんひと)の書(しよ)に記(しる)したれば   前(まへ)に録(ろく)しゝ異鳥(いちやう)の風に吹たゞよひ此土(このど)に飛来(とびきた)りし説(せつ)はものかは   お茶(ちや)の水(みづ)にて僕(ほく)の吹飛(ふきとば)されし一説(いつせつ)も実(じつ)とするに足(たり)ぬべし ◯ 牛込御門(うしごめごもん)外(そと)どん〳〵橋(はし)角(かど)久世矦(くぜこう)長屋(ながや)崩(くづ)れ小日向(こびなた)大曲(おほまが)り辺(へん)小屋 敷 悉(こと〳〵)く大破(たいは)す水道(すいどう)町所々そんじ音羽(おとは)町 潰家(つぶれや)夥(おひたゞ)しく改代(かいたい)町 赤城(あかぎ)