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コレクション: STAGE3

安政風聞集 上中下 全 - 翻刻

安政風聞集 上中下 全 - ページ 47

ページ: 47

翻刻

 となり天上の女仙の召(めさ)るゝ心地して雲を踏(ふん)て分(わけ)入に結構(けつかう)なる宮(きう)    殿楼閣有即(でんらうかくありすなハち)其内へ至り見るに美(び)女多く出て是を迎(むか)へ美(び)酒 佳(か)  肴(こう)人 間(かん)に有らざる品 数(かず)を尽(つく)して饗応(きゆおう)す其中に女王(ぢよわう)とも思ハるゝ  美(び)婦人と枕(まくら)を双(ならべ)て楽(たのし)む事斯有事七日にして初て心 正(たゞ)しく成    れバ其身ハ元の家にあり夢(ゆめ)とも現(うつゝ)とも弁(わきま)へず此事を人々に語(かた)    れバ跡(あと)形もなき妄偽(いつはり)とて嘲(そし)り笑(わら)ふ余が云此事 更(さら)に偽(いつハり)にあらず    是物に魅(たぶらか)されたるなり都(すべ)て人 邪念(じやねん)あれバ魔夫(まそれ)に付て入 斯(かゝ)る    事ハ大かた狐狸(こり)の妖(ばかす)ならんと云々    附て云魚ハ水に居て水を見ず人ハ気(き)中に居て気を見ず気ハ    常に満々(ミち〳〵)てあれども人の見る事 難(かた)し家の中へ日のさす時ハ始て    塵(ちり)や埃(ほこり)の立 舞(まふ)を見る立篭(たてこめ)たる所にても日だにさしこまバ風    なくても塵(ちり)を吹 散(ちり)すが如く見ゆ是 即(すなハ)ち気なり気の外に怪(あや)    しき事も不思議なることもなし此心なけれんバ邪(しや)気をも真(しん)の気    とし真の気をも邪気と迷(まよ)ふ狐狸(こり)の妖(たぶらかす)なども邪気にして真    気を奪(うバ)はるゝの外なし此理を思ひはかれバ道をも悟(さと)るべし世の様  をも窺(うかゞ)ふべし荘子(そうじ)も是を深くいへり禅(ぜん)の悟道(ごどう)も只(たゞ)是のミ  ◯予が知己(ちき)高木 伝(つたへ)先生といふハ武 芸鍛錬(げんたんれん)の人にてその中    にも馬 術鎗(じゅつそう)術 柔(じう)術の三ッは其奥意を粗(ほゞ)極め加ふるに文事を捨    ず此度 西洋(せいやう)の輕便炮(けいべんほう)術行ハるゝに付豆洲(づしう)なる韮(にら)山県令の門に入り    終(つひ)に彼(か)の地に修行(しゆぎやう)なしまづ免さるゝ者となりき然る故主家にも    惣藩中一 統(たう)に尊敬(そんけい)し既(すで)に在(ざい)国 尼(あま)ヶ崎より内弟子なども来  れる故に益(ます〳〵)門 人(じん)も倍(ばい)したり然るに先生が住る所ハ鉄炮 州(ず)なる