翻刻
【右丁】
其恩に報ゆる心ある分やさしき事なり然る
を 況や人倫においてをや御屋敷御拝地
以来二百余年の間山林より出る所の竹木の
材用田園より生する所の菽麦野菜の余誠御
屋敷の地に居て煙りを立庶民廿四余家妻努
数口養ひ
侯家諸士の利潤をかふむるもの勝て計ふ
へからす爰に於て駿馬の功労莫大也と云
つへし杉の馬場なる南のかた林の中に樫の古来
ありしか彼駿馬を埋し跡なりと老人の語り
しか星霜の久しき其木も老朽て安永の末かた
【左丁】
仆れ伏ぬ今両士の望みを充て此地のあたりに
一ツの塚を築き歳時是を祭らは報恩謝徳
の仁心を顕し
侯家御蕃昌の御祈念ともならんかし
文化十三年丙子秋八月 山下利章識
利章謹て報するに駿馬の功労年久し
く絶て沙汰する人もなかりしにこたひ中家氏
の発起ありし事も不思議の一ッと云べし
孤光公の御後を嗣せ給ふ
宝林公今年七月二日二百回の 御忌に当らせ
給ふとて座間の宗仲寺に於て御回向の