翻刻
すの因(いん)及(およ)ひ腐敗(ふはい)に至(いた)るの経過(けいくわ)を論述(ろんしゆつ)する
を要(やう)するなり其(その)論述(ろんじゆつ)する所(ところ)第一(たいいち)に酸素(さんそ)即(すなはち)
外気(ぐわいき)の侵入(しんにふ)なり又(また)腐敗(ふはい)経過(けいくわ)の初期(しよき)第二(たいに)に
水分(すいぶん)の存在(そんざい)第三(たいさん)に温気(おんき)なり
第一 酸素(さんそ)の侵入(しんにふ) 動物(たうぶつ)植物(しよくぶつ)より成(な)るの諸品(しよひん)
豪(がう)【左ルビ「すこし」】も酸素(さんそ)に遇(あ)ふことなければ嘗(かつ)て腐敗(ふはい)す
ることなし一臠(いちらん)の肉(にく)を取(とり)てこれを汞中(こうちう)【左ルビ「みつかね」】
に密閉(みつへい)し貯(たくは)へ或(あるひ)はこれを炭酸気(たんさんき)若(もし)くは水(すい)
素気(そき)を充(み)ちたる玻瓈鐘内(はりしようない)に貯(たくわ)ふるときは
月(つき)を経(へ)るも著(いちじる)しき臭(しう)を発(はつ)することなしこ
れを貯(たくは)ふるに同法(どうはふ)を以(もつて)大気(たいき)若(もし)くは酸素(さんそ)を
以(もつて)満(みち)たる鐘内(しようない)に貯(たくは)ふれば速(すみやか)に悪臭(あくしう)を発(はつ)し
て直(たヾち)に腐敗(ふはい)す酒醸(しゆじやう)は単(たん)に泡醸(はうじやう)を起(おこ)す者(もの)の
みこれ即(すなはち)唯(たヾ)酸素(さんそ)を吸入(きふにふ)するの初程(しよてい)なり若(も)
し葡萄汁(ぶだうしふ)を無気内(むきない)或(あるひ)は純粋(しゆんすい)なる水素気内(すいそきない)
に於(おひ)て榨出(さしゆつ)すれは泡醸(はうじやう)することなし若(も)し
これを外気(ぐわいき)の流通(りうつう)するの地(ち)に於(おい)てすれば
たとひ閉蓋(へいがい)せる桶内(たうない)に於(おい)てするも漸除(ぜんじよ)に