翻刻
高枩の駅になれははや秋の日のな
らひにて西の方のあか〳〵とする津也
しなてるや蜩に啼し庄屋か軒
又宝達山は国の南に有誠に三州へ跨(マタカ)れる大山にて
過半の州也誠に此山は薬草金銀其外産物
多き山なれは宝達の名あり宝達村は西平に
あり家数八十軒計町作たる村也中比金を掘
し比所々より来り集りしゆへ出所を人々家名に
呼ふ有中にも谷内屋といふものは根元の者にて
今用ゆる所の大釜は末森の城の釜なりしといへり
其外此者の家に武器の類取伝へり銀を掘し比
繁昌して家数も多く有しよし其時金を
掘し所は谷内にあり金山敷潰れし時人多く死
したる故とも雨の夜は人多して泪くこゑ
するゆへ今泪谷といふ惣して人多く死せし
古戦場抔に所々有魂魄のこりて天曇に陰陽
気せまり蒸て声有野火燐火抔の不思義ある
事なり又方宝達の御前といふは村より壱里登る