翻刻
塩路から多く越くれは羽喰の海の
朝なきしたり船かちもかな
此潟縁は大町村金丸村水路村抔とて村数多し
千路の潟ともいへり中にも大田村四丁村は江戸
御旗本土方何某殿の領地なり四町村の庄屋に
勝田永三といふ者有又堀替新村には彦助と云大百
姓有四町村の内に若枩屋とて抱の女ありけ
繁花なり
如月の前つかた此潮上を小舟に棹を
さして金丸あたりへと漕出せるに千里
の詠め四方山の風情目かれぬ折から
岸に今様諷ふ色聞ゆくを見れは
やんことなき若達の礒菜なんと摘
る粧ひ此辺には思ひもよらさると舟人
に問へはあれこそ四町の里名におふ
若枩屋の与祢達といふを
傾城は誰かために摘む若菜哉
又四町村勝田永三は退役して百姓也此者先祖