翻刻
明和年中一村地深さ三丈計落いり家不残崩
せり又半道余今の所一村移りし是も又々崩
れかゝるにより此比は五十洲皆月の地をかり家
居作たきよしあれとも両村共又々地のあるゝ
事もあらんとゆるさす其初大浪打時海底より
浮之出しとて其時のはがせ船の形なる嶋あり
はかせ岩ともいへり此嶋には海あれの時は多し
舟迷霊あらわれ泪声抔する事夥し又上大
沢村へ樽見村ゟ八九町四十九まかり坂とて難
所を下りる也
如月の末峯吹く風に袖ひちて
春寒みわらひも山の好ところね
上大沢より大沢村迄廿四町余有内記とて利家公
御扶持人の十村役有筒井氏なり先祖は此辺の
郷士のよし又上大沢ゟ寺口へ出るはよき往来なり
七瀬の瀧とて名所あり末に記す 辺土に
は稀なる其外家居ありてよき村也後山に埋み
林とて栗林御林あり是を廻りて上黒川村