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翻刻
【右丁】
【絵=三つ葉、蓮根、慈姑】
溪齋【落款=溪齋】
【左丁】
月花(つきはな)もなくて酒(さけ)のむひとりかなと翁(おきな)の吟(ぎん)を考(かんがふ)れは閑静(かんせい)
質素(しつそ)に風流(ふうりう)を楽(たのしみ)ながらも酒(さけ)ならで愛(めで)たきものはあらずかし
然(さ)るを下戸(げこ)さへ喰(くひ)もの誇(ほこり)して今(いま)流行(りうかう)の会席(くわいせき)割烹(れうり)家(みせ)軒(のき)を
ならべて珍奇(ちんき)をいどむそが中に《割書:予(よ)》が朋友(ほうゆう)なる三谷(さんや)の八百善(やほぜん)亭(てい)
なるもの其(その)名(な)高く世(よ)に聞(きこ)えてつどひ給ふ賓客(まろうど)いと多(おほ)かりこゝを
もていぬるとし書肆(しよし)甘泉堂(かんせんだう)の主(あるじ)人 料理通(れうりつう)といへる一冊(いつさつ)を梓(あづさ)に
乞(こひ)鐫(え)りてあまねくもてはやせりとぞ有斯而(かくて)その巻(まき)のすゑを求(もとむ)る
者(もの)いと夥(さは)なりとて今茲(ことし)三篇(さんへん)を著(あらは)せると聞(きゝ)拙家(やつがれ)も一つ鍋(なべ)のものなる
喰気(くひけ)のいとなみさへすなればその巻(まき)のいとくちを嗚呼(をこ)がましくも解(とく)もの
ならし 文政うしのはつ春 花王田(さくらだ)の
清水楼主人戯に誌す