翻刻
むかし金銀銅なかりし事千餘年のほと世も豐
に治りしといへとも其代代は時代ことの外に
上りて人の心も俗もすなほなりし故也今より
百年千年の後次第に時代も下りて人の心も俗
もうすくなりゆかんには世はいかになるへき
事にやすへて異國のものの中に藥物は人の命
をすくふへきものなれは一日もなくてはかな
ふへからす是より外無用の衣服翫器の類ひの
物に我國開け初しより此方 神祖の御代に始
て出たりし國の寶を失はむ事返す返すも惜む
へき事也我國萬代の後の代迄の事を思召れ
神祖の御心をもて御心となされんには今の時
に及てその御心得有へき事難有御惠み成へし
然らは自ら 神祖の御後は天地と共に長く久
しくおはしまして其世世も民豐に國治まりぬ
へき事掌を見るかことくなるへし
本朝寶貨通用事略《割書:畢》