翻刻
【右】
證を遺し終に不治に陥る者多し《割書:龍脳麝は脳を害し磠|砂精は肺を傷ふ》初に
クュイニネを投し次てラウダを與ふる者就中効あり若 ̄シ初
にラウダ モルセイ等を將て少く効を得る者次でクュイニ
ネを用ふれども更に効あるを見ず吐下止て命脉絶す朋
百曰余がラウダを用ゐるは吐瀉して多く其養液を失ふ
を惧れ己むことを得ずこれを行ふ敢て主藥となすに非ず
と云へり次年十一月和蘭にても此病亦大に流行せるを
以て彼諸大家皆朋百の法に依てクュイニネを用ゐ大ひに
其功を得たり然れとも阿芙蓉は棄て用ふることなく却て
書を以て朋百を誥れり余是を以て其麻酔藥の用ふべか
【左】
らさるを断決せり〇外治は浴法、按摩、芥子泥、テレビン油、
カヤフーテ油の如き皆各 ̄く多少の効あり就裡全身熱浴の
如きは體中徧所至らざる所なく熱を以て表神を鼓舞し
温蒸を以て克く行血を促し其他垢膩を去り氣孔を開く
等其功諸藥の決して及さる所にして其効驗能く内服の
クュイニネに優れり故に今歳《割書:文久二|年
壬戌》の流行には余惟クュイ
ニネと全身浴を以てこれを治せり其法
先 ̄ツ浴場を造り患証の程限を襗ばず徧身を浴場中に没
し粗布を以腕手背胸を摩すること十二秒時更に硫酸クュ
イニネ《割書:四十勺|》水《割書:一合|》希硫酸を以て容化し浴中に在て