翻刻
【右】
頓服せしめ次で浴を出しめ拭乾し褥中に温保し頻に
冷水少許を以て唇舌を濕さしめ温沙嚢を以て脚を
温め次で我一時半を経て後クュイニネ六勺を元となし
頓服せしむ
〇クュイニネは其功殊に脊髄後脳に達し其緩怠せる機能
を鞭撻するが故に初量二十勺にて眩暈耳鳴を發する者
多し是即 ̄チ其功を奏する一佳徴なり然れども其苦味甚し
きが故に患者これを服して吐出すること多し故に浴場中
に在て之 ̄レを服さしむれば多くは克く堪へ服す此益 ̄シ浴場
にて胃腑の痙攣を鎮静するが故に因るなるべし若 ̄シ尚吐
【左】
して止まざる者は只管(ヒタスラ)強てこれを與へ終に服し得るに
至らしむべし〇コレラは萬病中血中の水を耗失すること
最多きが故に冷水を以て口舌を濕すを殊に良とす〇或
云クュイニネは獨 ̄リ卑溼沼泥の地に在ては即 ̄チ佳なり乾燥の
地の如きは必し之 ̄レを要せずと云へり然れどもコレラ
土風に因て其病性を同せず其患症を異にせば則可なり
然 ̄ラざれば豈地の卑高を以て其性功を異にする理あらん
や
松本良順記
醫官松本良順、奉_二 幕命_一、蘭醫朋百_一、學_二醫科諸門広、頗通_一