翻刻
【右】
末に挙ぐ事一二方の如きは彼邦にて頗る驗を經たる
者なれは宜く信從して之 ̄レを採用すべし
一 近時我邦の賣藥者流幾群䀋を専らコレラ病の妙功藥
たるを誇張すれども未だ西書中此の如き事を載する
を見ず又之 ̄レを用ひたる患者を親驗するに佳候を呈す
るを見ず却て苦悶を増加し死に至るを見るなり學者
それ慎まざるけんや
文久二年壬戌十月五日 洋書調所教授方 謹識
【左】
疫毒預防説《割書:千八百五十六年荷蘭の醫師フロイ|ンコソスが著せる衛生全書撮譯》
當今一異種の病あり恐るべき荒亂をなすに因り衆人甚だ
之 ̄レを危懼す此病に於ては一種の傅染毒血中に生じ其毒感
受し易き體に觸るれば其曽て生じたる人の體に發する症
と全く同症を起し以て絶へず新に傅染をなすなり〇是故
に此病は人々陸續急速に相傅染し或は衆人一齋に相感染
す是を以て此病の毒は患者の血中に生ずること恰も發酵の
鋭烈液中に瀰蔓すると同一なるべしと考察せり〇但 ̄シ此傅
染毒時としては甚た揮發走竄にして病人の呼氣及び蒸發
氣より大氣中に傅送し夫より無病健全の人の吸氣に入り