翻刻
【右】
更に其體に傅染すること疑を容るべからず〇史録中屢 ̄く云へり〇方今に於ても尚此の如き病屢 ̄く流行する
ことありて其症二般あり即 ̄チ一は熱地に流行する症にして
之 ̄レを發黄熱《割書:ケーレコ|―ルツ》と名け一は寒國にも亦流行する症に
して之 ̄レを痧病《割書:コレ|ラ》と稱す〇發黄熱は夏日の熱度寒暖計を
以て測るに其中數七十五度の地より全く外に出でず阿非
利加及び西印度は其最 ̄モ甚しき地方なり〇痧病は昔時亞細
亞に限れる病なりし[其本名を亞細亞霍亂《割書:コレラア|ヂアチカ》と云も
之 ̄レに因る]然ども此症近時は西土及び他の温道諸地にも夥
【左】
しく流行せり〇右の二病共に血中に含める毒氣を以て各
個の生器を虚衰せしむることをなし特に消毒諸器を甚しく
損害す〇發黄熱に於ては胃より半ば腐敗せる血を混じた
る膽汁を吐出し痧病に於ては胃及び諸膓の血一個の分泌
機を起して其流動分《割書:即 ̄チ血中|の水分》のみを上下に泄出するを以て
全體の血中には復 ̄タ運輸すべからざる稠厚の物質より留る
ことなきに至れり
葢 ̄シ傅染病は其毒蔓延して静定せる氣中に蓄積するときは
特に其荒亂をなすこと大なりとす〇是を以て傅染病を預防
するには新鮮の大氣を流通せしめて自在に之 ̄レを居室中に