翻刻
【右丁】
にはせられて心ならす此地にきたれり
ねかはくはめくみをたれてたすけさせた
まへと申す女房たちのたまふやうみつから
をの〳〵よのつねの人けんにても侍へらす
おなしく仙家(せんか)のかすにありされはなんちら
にこと葉をもかはすへきことならねともな
むち【汝】おもひかけすこの地にきたるも又故
ありむまれてよりこのかた心にいかりを
わすれ欲(よく)すくなくしやうちきにして物を
あはれみ慈悲(じひ)ふかきそのまこと天理(り)にかなひ
【左丁】
こと故【事故=差しさわり】なくこのところにもきたることをえ
たる也さらは仙境(せんきやう)の有さまをみせ侍らんに
まつ溟海(めいかい)の水に浴(よく)せよとの給ふやすひこ
水に浴(よく)すれはかしけ【かじけ=やつれること】くろみしはたえ【皮膚の表面】はたち
まちに色しろくこまやかにわかやきたり
又一りう【粒】のくすりをあたへてのましめた
まふに安彦(やすひこ)をろかなるまよひのむねたち
まちに霧はれてさやかなる月にむかふ
かことくにて自然智(しねんち)【じねんち=自然に悟りをひらいた智】をそさとり
ける