翻刻
千々は数々也我身計ノ秋にてハナケレ共身にとりては独事の様ニ悲しき秋ソト也
感時花濺涙惜【右横に 恨 と併記あり 】別鳥驚心【杜甫春望ヨリ十字】 就中腸断是秋天 平等ノ差別
差別ノ平等といへは我身《割書:ヲ|に》とれは誰も〳〵独〳〵と云心也 五文字に精を入
て見よと也月ニハ思ひノ出来物也月ハ陰気ノ性【右に併記】精ナレハ也春男秋女といへとも
秋は男女ともに物思ふ也 一身の秋のやう也只物思へとなれる秋のうへ也ト云
たることく也裏の説カ生死ノ一身〳〵ノ如く也鴨長明かナカムレハチヾニ物し【or ダッシュか。13や 26コマ目に類似線有】
よくとれり 月をみて心緒万端思ひアリ【心緒万端書両紙 伝えたい思いは無限にあるのに、書いた手紙は二枚だけだ。。。 白居易】
菅家
此たひは
宇多御門南都春日御幸の時御供ニテの哥也此度は供奉にてあれは
幣帛もとらす手向ぬそ紅葉を則幣ノ代ニ手向ル ソト也神のまに〳〵
は随意と書てまに〳〵とよむ也万葉ニアリ手向山モ奈良也幣帛と
書て手向とよむ也
三条右大臣
名にしおはゝ
名にしおはゝとは名ニ如此アル程ニト云心也相坂山ニコソ有ラント也さねかつらは
いかなる藪原ニモはひかゝりてあれ共人のしらぬやうにしてくるよしも
かなとの心也 名にしおはゝかよくあたる名にしおはゝ也さねはぬる事也
あすもさね二人の心新勅撰の一集の名か此哥一首の躰也 て【右横に併記○清 】ト
ヨムを沙汰アリ
貞信公
小倉山
宇多御門大井川御幸の時ノ哥也紅葉ちらすして今一たひの御【右に 行】幸ヲまて
かしと也宇多御卿行幸もあらん所也との給し故也 所は小倉山なる
行幸をまつ事もなけれは也紅葉は行幸まては過分也御幸をちらて
まてと也定家の本意也行幸も御幸も
あらん事ニテナケレトモ也
中納言兼輔
みかの原
みかの原は名所也みかの原ニわきてなかるゝ泉川トいひていつみきとイハン
枕詞也いつみきとはいつみたれはかやうに恋しきそとの事也泉トハ又涌
と云心也いつみのわくやうに心に恋しく思ふはいつ見たる故そと也
泉川いつみきとナフツテ【左に「如下」】読つくれは作【左に「如下」】た【它ヵ】る也後拾遺なとは此躰多也