翻刻
さやかにみえて中〳〵おかしき曙也是も此哥ノ心也さやかにみえしも明方
は光うすくナレハおかしき影なると也
春道列樹
山川に
是は早川なれとも風にちる紅葉のしからみかけてをけはそれにせかれて水
もなかれあへぬと也山川《割書:と|を》清(スミ)て云はわろし《割書:チハヤフル神ノイカキ 秋風ニアヘス散ヌル|から錦秋ノカタミ 何モ秋ニ取アヘス散トノ事也》
山風の一村〳〵葉を吹て行躰也上ノ句テ見はてゝ下句テ紅葉ト定ル也
一説ニ山•川ニト句ヲ切テ見ル説アリ入ほか也【「容認できず」的意ヵ】されとも山の景ト川の景トヲ
見ヘキ也川ノ流ヲ木葉ノしからみにてせきかへすヤウ也
紀友則
久かたの
是は春の日は風もふかすのとけきにしつ心ナク花ノちるはいかゝとの事也 花や
【次の行「是。。。ミルベシ」は朱筆にての書込み】
是程ニ長閑ナルニ花ハ何トテシツ心ナク散ソト也下ノ句ニ《割書:コトカ|ナセニ
》ト云心ヲ持テミルベシ
散らんと云説アレ共疑フハ悪キ也只目前ノ躰ナレハ也 変約恋秋の霜《割書:かけたる|ごとし》
此哥のはねやう右に同シ 秋霜トハ釼ヲ云也 季札カ釼ノ古事也釼ヲ
所望セシニ陣へ行砌ナレハ今ハ工遣スマシ皈【=帰】タラハヤラント云タレハ其間ニ所望セシ
人死タリサレ共一度約束ノ事ナレハ彼ノ塚ノ木ニ釼ヲ掛タリシ事也
藤原興風
誰をかも
高砂トハ高キ山ヲモイヘ共是ハ播磨ノ高砂也友トスル人モナキ程ニ松ヲト思
ヘトモそれも事久しき程ニ友トハ成マシキ也 《割書:寂蓮》高砂の松もむかしに――
又右ノ心興風カ身上ノ事也老テ友モ知音モナク成タレハ也松ハ久敷友トイハン
トスレハ是も又人間にてなけれは真実ノ友ニテハなき也世間皆此分也
紀貫之
人はいさ
是は貫之初瀬へ参る時坊をかへて侍れは懇にあるといへども心の中は知ね
ハ花ハ只昔ノ香ヲ匂ふ【他動】かあるしの心はいかゝと也
清原深養父
夏の夜は
夏の夜はよひかと思へははや明る程に月はさて雲のいつくにやとるそと云
心也聞えたる躰也 誠によひのやうなるやかて明る物也をさへていひ
たる新儀也況や月に向たらは短からん也 雲のいつこと云たるか西日也月
の匂ひになる也