翻刻
恵慶法師
八重むくら
河原院にて荒タル宿ニ秋来ルト云心ヲ人ニヨミケル時ノ哥也 とふ人もなき、、、
此心也 人ハ茂レル宿へハ問モこねとも秋は尋テ来ルソト也 融公ノ跡ヲ思ひての哥也
人ノみえぬ事ニテハなくて秋さへ来るよと也 人はみえねと秋は来るとみたるハ浅き云也
源重之
風をいたみ
つれなき人を岩になして浪を我にたとへたり何といひよれ共岩に波のうつ様ニ
ヨリテハ帰ルト也風ニハ猶岩ニ波ノ荒也又岩を人にたとへ浪を我身にたとふるは荒ト
云心モアリをのれのミト云ヲ我からト云ニ立入みるへき也風をいたみに又心をつけよ
世に思といふ者あれは也
大中臣能宣朝臣
みかきもり
御垣也禁中の御垣のキハニテ【右に「節会ニ」並記あり】焼火也右衛門左衛門か役にして焼也衛士ハ衛門
と云心也士ハ男トよむ字也衛門ノ男ト云心也その火は夜節会ニたけはその火の如
ク夜はもえ昼は消つゝもゆる思ひそと也 私云節会ニ不可限事也 不行有ヘキ事也
藤原義孝
君がため
後朝恋也 是は君がためならは命はおしく思はね共逢初てからは今一度あはん
と思ふ心に命もなかくほしきと也前はおしまぬ命を今は又逢事も如何あはんとおし《割書:む|躰也》
一たひ逢ならは命はおしましと思ひしか逢てからよくぼり【「欲ぼる」より】出来たると也 君かため
といひたるかちとふり【「古り」】たるといへともそれにて簡要なれと也
藤原実方朝臣
かくとたに
さしもしらしなといはんための序哥也えやはいふきといふにえもいはぬと云心あり
弓ニイタメル鳥ハ曲木ニ驚ト云心也怨セルモノハ其吟かなしむ也
えやはいふきのはえいふましきと也又伊吹山にさしも草ありそれによそへて也
如此思へ共え云ましきもゆる思の程をも心一にてくらすとの心也もぐさは火
をつくる物なるによりて如此也 行成卿ノ冠ヲ禁中ニテ此実方打落シタル人
也惣別心の異ナル人也其故ニ流サレタルト也 此哥は恋ノ哥也
藤原道信朝臣
明ぬれば