翻刻
数のうち世にいかめしく思ふものそかれ又させる作者ともみえぬも入
侍り不審の事にや但定家卿の心世人の思ふにかはれるなるへし又古今
の歌読婁をしらすはへれは世に聞たる人もるへき事疑なしそれ
は世の人の心にゆつりてさしをかれ侍れはしゐておとすにはあらさる
へしさて世にそれとも思はぬを入らるゝは其人の名誉あらはるゝ間か
尤ありかたき心とそ申へらん此百首黄門の在世には人あまねく
しらさりけるそれは世人の恨も有へし又主の心に涯分と思ふ哥
ならぬも入へけれはかたく隠密せらるゝにや為家卿の代に人あ
まねく知事にはなれりとそ当時は彼色紙のうち少々世に残
て侍る也此哥は家に口伝する事にて談義にする事は侍らさり
けれと大かたのをもむきはかりは讀る事になれりしゐては伝受
有へき事也此内或は譜代あるは哥のめてたきあるは徳ある人の哥
入れらるゝ也百首は二条家の骨目也此哥をもつて俊成定
家の心をもさくり知へき事とそ師説侍し
天智天皇
秋の田の
是は王道御述懐の御哥也九州におはします時世をゝそれ給て
苅萱の関をたて往来の人を名のらせてとをし給ふ事あり天子
の御身にて御用心ノ事あるは王道もはや時過るにやと思召御心
也
時過たるかりほの庵にて覚悟すへしとそ猶可尋之此哥は
上代の風也上古は心たによく思ひ入れは巨細になき多かるへし
能々余情なるを思ふへき計とそ 山陵・・・といひて
倚庐のこと也 みさゝき也諒闇といひて天下穢する事也/倚呂(イリョ)これもり也
苫(トマ)也 あん内前也天智御父王へはなれまいらせられ/て(き可)篷(トマ)にふし
壌(ツチクレ)を枕にするといひて天子も親に離れ給てはいた/之(し)きを
三寸さけて仮に苫を■【葺の異体字【=艹口」月】】て御座也其内にての御涙は秋
の田の末つかたは庵と荒はてゝ其ひまかる露のもりて袖のぬ
るゝやうなるとの御哥也只御愁膓の哥也不吉なる哥と巻頭に
をかれたるはいかゝとの事也
持統・・