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コレクション: 松平文庫

温古集 五巻 - 翻刻

温古集 五巻 - ページ 100

ページ: 100

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【右丁上段】 無シト謂フ可カラスト雖𪜈武生驛ヨリ直南態々今 驛ニ馳セ是レヨリ直西大桐山中ノ山間ヲ縫フテ海岸 ニ出テ更ニ轉シテ海岸ヲ馳スルヿナレハソノ行程ヤ 決シテ短縮スルヲ得サルノミナラス湯尾峠ヨリシテ 先ズ迂回ヲ始ムルヿナレハ之ヲ春日野街道ノ斜メニ 西南ニ馳セ之ニ隧シ之ニ橋シ直チニ四里ニ乄海里ニ 出ルモノニ比スレハ必ラズヤ同日ノ論ニアラサル可 シ而シテ大桐山中ハ名ニシ負フ木ノ芽嶺ノ上ニ聳フ ル鉢伏山ノ裾ヲ縫ヒ千山萬嶽ノ最モ重疊セルトコロ ヲ開鑿スルモノナレハ其雪量ヤ敢テ今庄坂取ニ譲ラ サル可ク或ハ是レヨリ數歩ヲ蹹スルモノナルヲ以テ 抑モ冬雪初メテ至レルノ時ヨリシテ往来交通ノ不便 ヲ訴ヘ延テ翌春三月猶ホ雪裏ニ道路ヲ埋没シ一年十 二ケ月ノ中凡ソ四五ケ月ヲ便利ノ目的ヨリ除却スル ハソレコヽニ免カルヽヲ得サルヤ疑無カル可シ講究 此ニ至ラハ舊道ヲ保存スルト云フノ便利ヲ以テハ春 日野街道新線ノ便利ハ掩フテ非ト爲スヲ得サル可ク 經費ヲ減スルト云フノ利益ヲ以テハ春日野街道工事 ノ必須ヲ掩フテ非ト爲スヲ得サル可ク况ンヤ舊道ヲ 保存スト云フモ單ニ脇本鯖波湯尾今庄ノ四驛ニ過キ ス板取ハ固ヨリ隣縣ナガラモ中ノ河内椿井皆以テ保 【右丁下段】 存セラレサルニ於テヲヤ又タ况ンヤ其經費ヲ減スト 云ヘルモ減シテ左シタル影響ヲ吾人負擔ノ上ニ見サ ルニ於テヲヤ吾儕ハ断シテ第三線路ノ第二線路ニ及 ハサルノ速キヲ保スルナリ加之ナラス行旅者武生驛 ヨリ進ンテ今庄ニ達ス是レヨリ新道ヲ七里餘敦賀港 ヘ出テ同港ヨリ更ニ滊車ニ搭シ柳ケ瀬驛ヨリ長濱ニ 出ルヲ便利トスル乎仮令栃ノ木峠ハ車ヲ下ダリテ歩 行スルモ八里ヲ直馳シテ柳ケ瀬ノ停車塲ヘ達シ是レ ヨリ滊車ニ搭シ長濱ニ出ルヲ便利トスル乎十中八九 ハ寧シロ後者ヲ便利トシテ之ヲ把ルナル可シ本論凡 ソ四稿讀者幸ニ前後對比シテソノ經費ニ於ケルソノ 積雪ニ於ケル孰レカ便孰レカ否精細ノ講究ヲ賜ハヾ 單ニ吾儕ノ本懐ノミニアラサルナリ滊車東亰横濱間 ニ通シテ東海道品川川﨑神奈川ノ諸驛寂寥ヲ告ゲ大 坂亰都間ニ通シテ伏見三十石ノ通舩衰微ニ泣ク之ヲ 我大野街道若クハ大聖寺街道ヨリ除却セラレシ金津 大窪ニ比スルニ或ハ甚シキモノアリ冀クハ我今庄湯 尾等ノ同胞兄弟豁然コヽニ貫通慧眼ヲ洞開シ断然無 欲ノ企望ハ之ヲ廃止シ世ノ文明ニ伴フトコロノ新産 業ニ就キ更ニ將来ノ福祉ヲ増スノ企望ニ換ヘラレシ ヿヲ吾儕切望ノ至リニ堪ヘサルナリ   畢 【左丁】 実ニ感佩之余り後の心得ニ新聞を張遺す 明治十八年九月新聞前田大書記官演説 【上段】    雑報 〇前田大書記官 同大書記官には本省より電信/頻々(ひん〳〵)と して帰を/促(うな)がされ且つ/宿痾(しゆくあい)癒へざるをもて大聖寺より阪 井港へ出でられ直ちに敦賀通ひの汽船に/搭(とう)して東帰せら る可き/筈(はづ)のところとほりがけ福井へ立寄られしなれは沿 道富山に於ける金沢に於ける各地のごとく/広(ひろ)く/演説(ゑんぜつ)せら るゝこと無くして止みたゞ昨朝旅館羽腰晴嵐亭におゐて 県令書記官警部長を初め警部残らすず勧業課員残らず庶務 課長各郡長 三潟郡長には代理として書記参館 へ何か/説(せつ) /述(じゆつ)せらるゝところあり昨日一日滞福今朝は直ちに滋賀県 へ向け福井を離(たゝ)れたり尤も一昨晩をもて阪井港より福井 へ/参(まひ)られしにて福井へは更に東帰の上改めて出張相成る 可しと/噂(うわさ)せり 〇前田大書記官金沢に於ての演説 前項/記載(きさい)せるがごと く同大書記官には東帰を/急(いそ)かれしをもて福井へは通りが 【下段】 けに立ち寄られしのみ/広(ひろ)く/演説(ゑんぜつ)せらるゝの事は無かりし をもてこの回は記者之を筆記して読者(どくしや)に報道するを得ず /遺憾(いかん)に/堪(た)へざりしところ幸に一昨々日本年八月廿九日 の加越能新聞に同君が同地公園の成巽閣に於て演説せら れ筆記を同県勧業課より寄せられしものなりとて/掲(かゝ)げあ るをもて/暫(しば)らく之を/借載(しやくさい)し以て読君の/渇望(くわつぼう)を/慰(ゐ)す  余や今回東海北陸の二能農区巡回に際し各郡区毎町村に  至り有志の諸氏は/勿論(もちろん)其他婦女子に至るまて親しく農  商務省の御趣意を/談話(だんは)せんと欲すと雖も巡廻地方の多  きと淹留期あるとに因り本意を/枉(ま)け諸君をして貴重の  光陰を費し来会せらるるゝを乞ふに至る其労は深く謝す  る所なり今や余か/陳述(ちんじゆつ)するに先ち一言以て諸君の/参考(さんこう)  に供すへきあり即ち今席は余を政府の官吏と/見做(みな)さす  諸君の友人に農工商の/衰頽(すいたい)を/憂(うれ)へ倶に一場の/懇話(こんは)を開  き以て諸君の/注意(ちうゐ)を/促(うなが)すものと見做されんことを要す而  て余は/訥弁(とつべん)なるを以て談話中悟了に易からさる事なき