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を保せず若し談話の要旨或は解し難きことありては実に
千歳の/遺憾(いかん)なれは充分質問に応せんとす諸君夫れ之を
諒せよ
御趣意 御趣意は数年来国家今日の/衰頽(すいたい)に/陥(おちゐ)るの/危急(きゝう)
を救ふの点に外ならす即ち左の如し
第一 勉強之注意
第二 /倹約(けんやく)之注意
第三 /勉強(べんきやう)倹約により遂に/儲蓄(ちよちく)を為さしむること
以上列記する三要点の趣意は僅に一片の達を以て能く
其/深意(しんい)を/貫徹(くわんてつ)せしむる能はす故に農商務省に於ては重
なる官吏を各地方に派遣し其の精神の存する所を/親話(しんは)
/懇談(こんだん)せしむるなり抑も士農工商共今日の現況且此の現
況を来したる原因并に此を/挽回(ばんくわい)するの方法は一言半句
の能く詳にする所にあらず故に大略其要旨を摘て演る
所あらんとす
夫れ今日士農工商は如何なる状況なるや思ふに士は十
中の八九皆既に産を/破(やぶ)り/殆(ほと)んど/餓(うへ)に/瀕(ひん)するの状を呈し
而して其/僅(わづ)かに残る一分と雖とも或は今后一ケ年又は
二三ケ年間にして将さに其/資産(しさん)尽きんとするの状況に
迫れり農家は租税賦課の/負担(ふたん)日に重り公売処分を受く
【右丁下段】
るもの日を追て/増加(ぞうか)せり尚未た表面に斯の如き/惨状(さんじやう)を
/顕(あらは)ゝるものあるも其内幕に立入らは親族相互に/補翼(ほよ)
し/漸(ようや)く今日を/凌(しの)ぐと雖とも常に/収支(しうし)/償(つくな)はす/畢竟(ひつきやう)全国を
挙て公売処分の/苦界(くがい)に/陥(おちい)るの/景況(けいきやう)なり商は金利高く資
本の/流通(りうつう)に苦しみ取引の信用を失して売路開けす只常
に不景気を/歎(たん)するのみ工は製品の使用者日に/減(げん)し/需用(しゆよう)
/者漸々(しやよう〳〵)跡を/絶(た)たんとす故に物品は/堆積(たいせき)して賃金を得る
の途なく他に従事せんとするも之れを/使傭(しよう)するものな
く相率て業を/廃(はい)するの景況に陥り/茫然(ぼうぜん)徒手徒に如何と
もするなきの状なり/嗚呼(あゝ)/痛歎(つうたん)■息の至ならすや而して
此の現況を来せる/源因(げんいん)は三種あり第一は全国より来せ
しもの第二は一県より来せしもの第三は一郡或は一町
村より来たせしもの是れなり其第一は外国の交際鉄道
の/布設(ふせつ)電信の/架築(かちく)郵便の/開設(かいせつ)等其他各般の事業を起し
苟も一国の開明人民の/幸福(こうふく)を/謀(はか)らんか為め已に二億万
円の/巨額(きよがく)を/消費(しやうひ)せしによる第二は陶銅漆器或は砂糖又
は綿煙草等の如き各地著名物産の頓に/衰凋(すいちやう)せしにあり
第三は其郡其村に於て生産の/減退(げんたい)せしにあり従来官民
俱に不景気を/救(すく)はんと欲して却て/失敗(しつはい)せしことなきに非
らす/畢竟(ひつきやう)不/注意(ちうい)の然らしむるによるものなり既に斯く
【左丁上段】
の如き/種々(しゆ〳〵)の源因より来せる/衰頽(すいたい)は農商務省に於て挽
回の方法を已に/確立(くわくりう)せり然りと雖とも如何に善良の方
法成ると雖とも之れに/応(おう)する者なくんは亦た/効(こう)を見る
能はざるなり
勤勉
抑も今日の民況にては/勉強(べんきやう)は/飽(あく)まて勉強し/殆(ほと)んど其/極(きよく)
/点(てん)に達したるものゝ如し尚此上の勉強は/到底(とうてい)望むへか
らす然れども勉強の注意に至つては甚た不/充分(じうぶん)と謂は
さるを得す今一例を/掲(かゝ)けて/詳説(しやうせつ)する所あらんとす/譬(たと)へ
は吾か日本国の養蚕事業たる将来/改良(かいりやう)を加へざるも可
なるか/決(けつ)して然らす第一桑園蚕種繭生糸染法織法に至
るまて/悉(こと〴〵)く改良せさる可らす凡吾か国の桑樹にして
三年以上のものには悉(こと〴〵)く病あらさるなきか必らす否
と言はん蚕種も亦無病のものあるか必らすなしと答へ
さるへからす已に病桑を以て病種の蚕を養ひ焉そ良繭
を得るの理あらんや故に本邦の生糸に於ける一として
外邦に/劣(おと)らさるものなし之を伊仏の両国に比すれは/恰(あたか)
も霄壌の差あり今伊仏の如き無病の/良種(りやうしゆ)に改良せんか
一ケ年二千五百万円の増加を致すへきなり又た吾か国
の生糸上等のものは僅かに十分の一中等は十分の三下
【左丁下段】
等は十分の六の多きに居る何そ粗品の多き驚くに堪へ
たり而して我か上等と称するもの之れを外国のものに
比すれは尚中等以下に位す然りと雖とも今や之れに改
良を加へ中等を上等に下等を中等に進るときは今後百
年の後に於ては百六拾二億万円の国力を増すへし実に
/巨大(きよだい)の金額ならずや若し将来改良をなさゞれは空く此
の大益を失ふに至るへし豈願はさるへけんや実に其不
注意の恐るへき斯の如し彼の伊仏に於て養蚕事業今日
の盛大を極むと雖ども其昔之を伝しものは我国にあら
すや彼僧某/僅(わづか)に/毫厘(ごうりん)の蚕種を竹杖に/蔵(おさ)め数千里の海路
/砂漠(さばく)を/渉(わた)り/渇(かつ)を/忍(しの)ひ/辛(からう)して本国に持帰り以て/増殖(ぞうしよく)を謀
り多年刻苦今日の地位を占むるものにして/所謂(いはゆる)/注意(ちうゐ)の
切なるものと云ふへし今や却に伊仏の吾か蚕種を見る
こと恰(あたか)も虎列刺病のごとく大に/慊忌(けんき)せられ需用者日に
減せんとす今後両三年を経尚之を/挽回(はんくわい)する能はされは
日本蚕種の/輸出(ゆしゆつ)将に/命脈(めいみやく)を/絶(た)たんとす独り養蚕事業の
みならす百般の事業皆然らざるはなし豈に/歎(たん)すへきの
甚しきにあらすや是れ全く不注意の致す所なり今我国
人をして欧米人に比するときは実に人にして人と云ふ
へからす家屋の多きも/矮陋(わいろう)にして彼れの小屋に/劣(おと)れり
港あるも港あらす唯天然港湾の形を存するのみ道路あ