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【右丁上段】
るか未た一も道路とすへき者なしに他事々物々皆然ら
さるはなし只日本国に於て注意の/完全(くわんぜん)なるもの一ある
のみ其一何そや横浜神戸長崎函館等の居留地是れなり
此の居留地に於ては衣食住の三者備具し自由の生計を
為せり是れ皆我か不注意者同胞の膏血を/絞(しぼ)られたるの
/結果(けつくわ)にして而も居住地に於て衣食住を充すのみならす
彼れか本国へ/輸送(しゆそう)する金額幾千なるを知るへからす実
に/切歯(せつし)に/堪(た)へさるなり 未完
四民今日の/衰頽(すいたい)に及んては如何に/奢侈(しやし)を為さんとする
も能はざるのみならす/直接(ちよくせつ)の/倹約(けんやく)は又た余地なきが如
し然れとも顧みて積年の/弊習(へいしう)を察すれは注意の/欠点(けつてん)指
を屈するに/遑(いとま)あらす茲に其の一二例を挙くるに/祭葬(さいそう)の
礼をなさんか従来の風習或は酒食を以て人を/饗(きやう)し/憂(うれ)ふ
へきに喜ひ悲むべきに楽むか如き/悪弊(あくへい)あり実に人倫を
乱し礼を失するものと云ふへし又た子女の/新婚(しんこん)等に際
し或は/新履(しんり)若くは絹帯を求るあり是れ/富裕(ふうゆ)の日に於て
為すは尚少く恕すへきも今日/危急(きゝう)存亡の秋に於ては速
に/矯正(きやうせい)せさるへからす諸君帰郷せらるゝの後は一家挙
て茲に/注意(ちうゐ)し/延(のべ)て一村一郡の風習を改良せられんと切
に/企望(きぼう)の至に/堪(た)へさるなり
【右丁下段】
貯蓄
方今の/現状(げんじやう)に於て下等人民に在ては始より之を為さん
とするも能はさるへし故に先つ中等以上の人より之を
実行し/殊(こと)に有志は/率先(そつせん)し此の目的を達せんことを望む凡
人を治んとする必先自ら治さるべからす本省に於ては
去年来/非常(ひじやう)の改革をなし/痛(いた)く/庁費(ちやうひ)を/節減(せつげん)し其目は馬車
なり馬なり官吏の/旅費(りよひ)茶等にして定額の凡三分一を/減(げん)
したり是れ為し能はさる所のものにして実に能く為せ
しものと謂ふへし其減したる/費額(ひがく)を以て/直接(ちよくせつ)は農工商
事業に資せんことを謀り且本省の官吏は一般/貯蓄(ちよちく)をな
さんことを/規約(きやく)し現に之を実行せり就中各自亦務めて
/冗費(ぢやうひ)を/省(はぶ)き若干を/義捐(ぎけん)□農商業に小補あらしめんとす
而して今や諸官員力を/協(あは)せ心を同ふし/黎明(れいめい)より省衙に
上り各其職を執るを常とし甚しきは夜を徹するもの亦
少なからず本省の如きは元来府県等に比すれば其事務
稍閑なりと雖今日に至りては各官の事務/繁劇(はんげき)にして/勉(べん)
/励(れい)すること幾んと地方戸長役場に/譲(ゆづ)らさるなり余も又
た昨年来本省に宿泊し暁を/徹(てつ)して/繁務(はんむ)を庶理せり夫れ
/勤勉倹約貯蓄(きんべんけんやくちよちく)の三点に注意するは尤も目下の/急務(きうむ)とな
す然るに人或は云はん方今民間の/困難(こんなん)に際し既に節倹
【左丁上段】
を為さんと欲するも衣食尚足らす又勤勉の如きは為す
べきの事業に乏しく況んや貯蓄に於てをやと/往々(あう〳〵)之を
口実となすものあり一理あるに似たりと雖も若し/頑然(ぐわんぜん)
として勤倹貯蓄の道を怠らば全国皆な/飢餓(きが)の/域(いき)に陥り
亦た如何ともなす能はざるべし諸君は斯る/悲痛(ひつう)の時に
際し何を以て吾か国を/維持(いぢ)せんとするや
以上三要点に就き政府意のある所大略/説話(せつわ)する此の如
し更に一歩を退き是より一個の有志として/談話(だんわ)すると
ころあらん 未完
余は多年来外国にありし/際(さい)其見聞上大ひに/感(かん)する所あり今其一
班を談話し国家に尽すべき注意を/促(うなが)し併て三要点の旨意を/補(おぎな)は
んとす/抑(そもそ)も本邦に在ては本邦を思ふの情も亦た自つから/疎(そ)なる
か如しと雖とも海外に在つては然らす吾国人を見れは互ひに相
/慕(した)ひ相助けるの念/倍々(ます〳〵)深く国家を想ふの情最も切なり故に/貴賤(きせん)
を問はす一場に会し故国の事情を説話する等のことあるときは恰
も兄弟の思をなせり又偶々外人の本邦を評するや語中切歯に堪
へさる事少なからす又上海に於て士族の娘嬢か水兵等に身を/鬻(ひさ)
ぎ以て生計を/営(いとな)むものあり吾日本人に於ては此の如き/醜体(しうたい)は決
してこれなきを信したり然るに豈計らん日本の婦女子にして此
【左丁下段】
の/醜業(しうぎやう)を/営(いとな)むものあり然るに吾人尚此日本の婦人を見る実に/姉(し)
/妹(まい)の如き/感覚(かんかく)を/惹起(ひきおこ)す■て其心情を察するに必す甘んじて外人
の求めに身を売るを快とするものあらんや之れ/畢竟(ひつきやう)日本の/衰頽(すいたい)
より終に爰に至るものならん実に悲歎に堪さるなり聞説吾か日
本人は事を為すに目的なく而して一小事に/論議(ろんぎ)/喧(かまびす)しく却て大
事に/恬然(くわつぜん)として顧みざるの状あり俗に折合の付かさる国と/嗤笑(しせう)
せり所謂我国に在ては或は官吏と云ひ或は人民と云ひ或は何党
或は何派と互に其の趣を/異(こと)にするの/情態(じやうたい)あり然るに之を外国よ
り見るときは一家の中父子夫婦の間に/紛紜(ふんうん)を起したと一般にし
て畢竟一家/破産(はさん)の/兆候(ちうこう)と云はざるを得す実に/慚愧(ざぎ)の至なり豈に
/鑑(かんか)みざるべけんや
却説今日は之れ如何なる時ぞ内は/凶歉(けうけん)の徴候あり又眼
を/転(てん)じて外国を見れば英国と云ひ仏国と云ひ澳国と云
ひ何れも軍備を/拡張(くわくちやう)す是に反して東洋の状況を/顧(かへりみ)
れとも印度の如きは英国の所属となり又た朝鮮の如きは
既に他邦の為に砲台を/築(きづ)かれ実に印度と謂ひ朝鮮と謂
ひ支那と謂ひ危験(きけん)の至りならずや若し一朝朝鮮を/併呑(へいどん)
し来りて我れに望まば我れ何を以て之を/防(ふせ)かんや実に
/危急(ききう)存亡の秋と謂はさる可らす加旃一層/慷慨悲憤(こうがいひふん)に堪