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コレクション: 松平文庫

温古集 五巻 - 翻刻

温古集 五巻 - ページ 103

ページ: 103

翻刻

【右丁上段】 へざるものあり何そや英国女皇は吾国をして彼れが隷 属と/見做(みな)すべきことを某に内調せしとかや/嗚呼(あゝ)吾国民た るもの此語を聞き誰か/奮激(ふんげき)せざるものあらんや又た或 る歴史を閲するに阿蘭佗王国の如き已に他の版図に帰 せしも尚一の阿蘭佗王国あり即ち我が長崎の出島之れ なりと彼の「ナポレオン」が我国旗を見る処は皆属邦と 云ひしによるものならんか       未完 〇前田大書記官■駅に於ての演説 前号の続 以上/述(の)ぶる所は則 ■ち本省趣旨の要目にして茲に会合せる諸君は能く了■せらるゝ 所ならん諸君郷に帰るの日/率先(そつせん)/誘導(いうどう)不/撓(たう)の精神を以て此の三者 を実施し農工商の/衰頽(すいたい)を/挽回(ばんくわい)し以て国力を増進すへし諸君請ふ 夫れ之れを勉めよ  又同官か旅宿に於て金沢石川河北一区二郡の有志及  び郡県吏と/対話(たいわ)ありたる其筆記は左の如し 余か今回巡回の趣旨は今日の最も/重要(ちやうよう)事件なれば又力 めて諸君の/質疑(しつぎ)に答んとす故に各自意見のある処は/遠(えん) /慮(りよ)なく充分陳述せられたし且農商務省に於ては先きに 演るか如く今日の衰頽を挽回するの/計画(けいくわく)已に確立せり 其/順序(じゆんじよ)方法に至ては言冗長に/渉(わた)れは茲に其大略を/述(の) へん 【右丁下段】 今日第一とする所は本邦の国力を養成する事是れなり 之れを養成し其国力を増んとするには既に一昨日も述 へし如く各般の事業を/改良(かいりやう)し専ら/勉強(べんきやう)/倹約(けんやく)に注意をな すにあり 抑も現今我国の状況を見れば農工商とも大ひに衰頽し /殆(ほと)んと其極に達し/恰(あたか)も平癒望みなき病人の如し而して 此病源は遠く天保年間に起り延て今日に及ふ是れ即ち 農工商勉強の不注意所謂不/摂生(せつせい)より起因するものにし て亦た如何ともなす能はさるものゝ如し然らば/最早(もはや)今 日に至りては其治療法なきか/否決(いなけつ)して然らす已に旧漢 法■即ち草根木皮を用ゆる昔日に於てすら之れを/治療(ちりやう) したるに非らすや況んや/救治法(きうぢはう)■開けたるの今日に在 ては之れか/回復(くわいふく)を謀る敢て難きに非らさるなり而して 斯の如き/困難(こんなん)は欧米各国に於ても其例又少しとせす已 に歴史に徴して明かなり是れ全く治療の宜しきと養生 怠らざるの/結果(けつくわ)にして今日大に/富饒(ふうじやう)を致し無病/健康(けんこう)の 身体となりたるにあらすや人誰か病者を好んで健者を 悪むものあらん豈に深く鑑みさる可けんや政府に於て は既に救治の方法を/確定(くわくてい)し即ち民間の/負担(ふたん)を軽くせら れん等のことを大に/配慮(はいりよ)せらる或は同業の組合/専売特許(せんばいとくきよ) 【左丁上段】 及ひ商標条例の発布巡回教師の/規則(きそく)等を設けらる是等 即ち救治方法中の一なり然るに民間に在ては未た養生 に注意せす恬として/毫(ごう)も/察(さつ)せさるものゝ如し斯の如く んば何を以てか之を■するを得んや/曩(さき)に本省に於ては 農工商の事業に就き/詳細(しやうさい)の/調査(てうさ)を各府県に/需(もと)めたり然 るに四十七地方中に於て最も緻密の調査を得たるもの 三地方あり而して当石川県の如き即ち其一なり夫れ政 府に於ても之れか/救済(きうさい)の方法は已に確定せし以上は爰 に会する諸君衆に率先し能く此の三要点の趣旨をして 普く実施せんことを/切望(せつぼう)の至に堪へさるなり  右演述畢り来会者中質問するもの数名あり今其/質疑(しつぎ)  の/要旨(ようし)を/掲(かゝ)くれは即ち実業に/疎(うと)きものは其業体上に  付勉強の注意を/諭(さと)すに苦しむ節倹の注意に於ける動  もすれは/吝嗇(りんしよく)に/陥(おちゐ)り其甚しきに至ては金を/懐(ふところ)にし  為めに質問の融通を/塞(ふせ)くの恐れなき能はす又金融閉  塞して百般の事業/渋滞(じうたい)すと云ひ又興業銀行設立如何  或は演説中に於て日本桑樹凡三ケ年以上のものは/悉(こと〴〵)  く病桑なりとの謂如何等の質疑に対し/答弁(と べん)せられた  る大意左の如し          未完 【左丁下段】 〇前田大書記官 前号同書記官の武生へ/着(ちやく)せられ/演説(えんぜつ)あ りし/概況(がいきやう)を/記(しる)したるが猶ほかの/細報(さいほう)を聞くに南條今立郡 長官原良三郎氏には先般郡下各郷村を/巡回(じゆんくわい)の/砌(みぎり)/済急法(さいきうほう) の/必須(ひつすう)を/説諭(せつゆ)し且つその村々へ該委員を/設(もふ)けられしをも て今回同大書記官の来武を幸ひこの人々にもその演説を /親(した)しく/聴聞(ちやうもん)させんとかねて郡達ありしにぞ去る一日同大 書記官の若武あるや同地に有名なる大寺引接寺を集合場 と定め各村戸長及び各村済急委員を/集合(しうごう)し十分の演説を /乞(こ)はれん/積(つも)りの所ろ同大書記官には/帰省(きしやう)を急がれ/漸(やうや)く三 十分の時間をもてそれ〳〵面会を為さんとのことに集合 所は見合せと為り前号記したるごとく/近傍(きんぼう)戸長始め有志 者百名はかりへ/旅館(りよくわん)畳屋に於て済急方法の/趣意(しゆい)を演説あ りしが郡長か今日に先達て郡下を巡回せられそれ〳〵/説(せつ) /諭(ゆ)ありしことをも聞取られ一/層親切(そうしんせつ)に人民へ説話あり尚 ほ再来を約して発足せられしと云ふ尤も遠隔の委員等は 同大書記官発武の後おひ〳〵/到着(とうちやく)演説の間に合わざりし をもて/空(むな)しく望みを失ふて帰邑せしもの/夥多(あまた)あり