翻刻
【右丁】
実症(しつしやう)の病も先 温散(うんさん)すべ
しとて治(ぢ)をあやまる妄(みだり)に
病をせむるよりは勝(まさ)れるが
ごとくなれとも病によりて
大に害(かい)あるものありその医
はかゝる愚(ぐ)なる事はなきと思
ふべけれとも悉(こと〳〵)く病家より
告知(つげしら)せねばこそ知れぬなるへし
外より察(さつ)をいれねばこそ
この名医(めい)のごとき人一々改
られなば大かたはづかしき治
【左丁】
法なるへし古人の偏僻なる
といへる治法もおの〳〵見る
所ある故に誤(あやま)りもなきと見
へたり今の見識なき人の
偏僻なるとは同じからす今
の世にも見識ある人の治
法は偏(へん)なるやうにおもへども
効(こう)ある事おほし医を業(げう)と
する人ふかく心を用ひ深理(しんり)を
さとるべき事なるべし病家
も常に医の道に心をよせ