翻刻
近し高洲の嶽の東ひらにある村也
此河内越へとやらにかゝり山路をたとりの
ほりしに谷内の清水こそ町野川
の源といへるをやかていつしか川音も
絶々に汗苦敷渇をしのかんと此
清水を詰ふ折から吉野川其水上を
尋ねれは昔の岩間の清水とくと
くと西行の古哥を思ひ出して
川音も消えて岩間の清水かな
又鈴屋飯田へ越ゆる閑道有黒嶺越といへり四里有
鈴屋村の向東の谷内へ寺山村を経て登る也
此寺山は所々別れて山中にあり大村也散村
阿部殿(アヘツト)といふ所に黒嶺の城主阿部の判官義
宗といふ人の塚有則往生にて所を五輪と
いふ則此村に判官の子孫ありて阿部殿〳〵と