翻刻
乱世に人のかくれ住し所と見へたり又此礒に
獅子岩とて有大獅子小獅子とて唐獅子を
誠に画ることし是は往古三崎権現獅子に乗
てあまくたり給ふ獅子岩と化したるといへ
り諺にいひ伝へるは或時権現獅子にいるかと
宣給ひしに入鹿といふ兼ありて答しより
権現の使者 海鹿(イルカ)といへり今も此魚を喰す
れは三年社参を忌むなり入鹿の三崎詣りと
いふことあり又此辺に義経の駒の爪石とて有
此岩の端に腰をして
すずしさや船の行えの見ゆるまて
又此辺に伯父の谷屋とて塩焼し所有此かまと
屋之翁あり何国ともなく風与来て村中を
乞喰躰にて徘徊せしに国所慥成事不云
年久敷此所に塩を焼てあり冬は縄抔なひ
て過しぬ仏学儒学其外諸稽に達し
武道にも委きものにてある時此所に難船
有て諸役人滞留有此者の事をきゝ色々