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コレクション: STAGE8

地震記 上 - 翻刻

地震記 上 - ページ 27

ページ: 27

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 是そ真の不幸といふへし父の心はいかに有つらん子を持てる親の  忘るましき話也き 〇新市町の横丁に老婦潰家に敷たり其嫁小児を抱きなから  走来りて我も侭に死せんとて泣|叫(サケ)ふ姑我はかく打れて叶は  されは其孫を頼む程に早々迎て呉よといへともいつまても見す  つる事なし火来りなはとかく焼死なんとて泣叫ふ其意  天通やしたりけん人々集り来り老婆を掘出しけれは三人共  難を免しとかや是嫁なる者の孝の徳によりて也けり 〇農人町の下に九十余歳の爺有是も嫁なる者背負て遁んと  いへとも老ひかみ承引せす色々機嫌を取中家潰れぬ    土木を仕のけて見れは嫁は拙老に組付たる侭にて俱にうたれ  死たりとそかゝる期に至りて心を変せさるは平常の孝心おも  ひやるへし又母を打せて其子は無事なるが自然世の治り己屋  住してつらくおもひめくらし我大変と恐れしあまり不覚にて  母親を失ひたり今は世間に長らへたりとて生甲斐もなく又  人前もならす仍而覚悟可極ほとにゆもふ也と親友に語りけれは  友の云様尤千万なれとも親の敵は地震也以来地震に迫り遁  たらは敵を討て遺恨をはらすへしと嘲哢せられしと也是  おもしろき嘘なりけりと風聞也心有へき事とも也返々も心得  有へき事にて懲悪の基本ならすや