翻刻
かぞへたりけれハ京の中一條より南九條より北京極
より西朱雀より東道のほとりにある頭すへて四万二千
三百余なん有ける云々と有新墓の僧も此意にや何寺
の住侶にや有けん聞まほし
○播磨屋橋南の岸に鋏物屋有手代八九人の内四人土蔵の二階に
在し時ゆり潰され一同埋りぬるに仕合なる事ハ梁や桁や柱や
組ちかひなから倒れ懸りたる透間ありて其所に集り命ハ
助りたれとも土四方より潰れ懸り真の闇と成ぬ聲の出る限ハ
呼けり呼へとも何かハ外に聞けんよしや聞ゆるとも地震ハ隙なく
又津波に恐れ家内の上下ちり〳〵立除たれハ誰ありて此中に
人有事をしらん四人の者とも明に出ん事を神願すれとも術なく
実に盲者の杖を失ひしにひとしく手を空敷して日夜を送る中
家根裏とおほしき所に探り當りけれハあら嬉しやと精力を
尽し内より他事なく《ルビ:掘繰|ホゼクリ》穴ゟぬけて七日といふに此世界に
出たりとそ今二三日も土中にあらん事ハ断食の身叶ハさる
所なるに是必神慮にや有つらんと風説有し
○赤岡浦の役人か大震の場合御蔵米数拾俵取出せし砌なるに
役下の者とも津波とや来らんとて逃出んとす役人大に怒り此
御米を始末せすして立除るへきか津波来らハとかく溺れレ
死なんと其旨下知し御米をハ残らす御蔵に入させ封印をして