みんなで翻刻ver1

コレクション: STAGE8

地震記 上 - 翻刻

地震記 上 - ページ 61

ページ: 61

翻刻

   用捨なく乗せ宿りしむ《割書:刎橋の橋臺にも一艘繋たる|男女五六十人程乗組居りしと云》 地震も    漸鎮るにまかせ八九日か程も滞船したりし《割書:此船は空人町に|来り居る上灘下》    《割書:灘の船に|やとおもはる》比島橋の東にも大船一艘数日入来り居しを見    たるよし人語りぬ是らも津波の用意にて有し也 〇大震におそれ浦戸町堀川より南は残らす唐人町川原に遁れ出  障子から紙屏風幕などをもて川風を囲ひ安座す東西より  遠見すれは四条五条の川涼を見るかことく風流に有しと也  かゝる所に酉の上刻東に当り津浪打入来ると叫ぶ間もなく震  動の音して潮高倉に成て溢入来るとりみれは見馴さる軽石なと  沫のことく真先に押入来りおもひもらよす寝耳に水と狼狽し  取物も取あへす又此所をも我先にと逃出るに夜には入瞽女は  手引を失ひ乳母は小児を捨馬方か放せし馬は刎廻り上を下へと  混雑する事相撲の庭の崩るゝといへともいかてか此騒動に及  はん怪我人も有つらん命から〳〵助りしとなん潮先は御旅所の西迄  川一面に押入追て引取しに財宝刀剣は吸江孕の海底に沈み  箪笥長持は波に与しことく引とられ衣類調度は又引潮に  ゆられ流れては終に熊手に懸り浅ましかりし事共也此夜の  大火に吸江葛島孕辺まても白昼のことく明り渡り船にて流し物を  拾ふに熊手にてより取にしたると也中にも不便なりしは  朝倉町とかや疫病にて大患なる爺を夜具に巻て川原に出し