翻刻
隠匿 置看病する中宿元近く火災と成ぬれは足弱の者とも付置
家内共諸道具始末に帰りし跡にて高潮入来り病者も波に
漬りし場合家族ら馳来り辛うして其場の一命は助りしかとも
是より再寒して日ならす空敷なりしと也是等上にもいへるご
とく不覚の第一番とおもはる蒲団に寝なから波にとられしと
云触らせしは癖言也しとかや
〇新町の人のよし家内に湿痺にや蹇となりて平臥す震の
日は主人は他行跡にて嫁なる者姑の足痛を負ひ少女なる者は
兄の病足を背負ひ潰れ家の棟を伝ひ隣家の婦女共々
北の堤に遁れ出山田橋に至りしに群集の中にいと奇特
なる女ありて津波来らは此橋も落申さんいさ比しまへ御供申
さん御老体を右わたくし負申さんといふ故誰人にやと問へ共
しれる者にあらすされとも嫁も労れたれは折幸と其深切に
まかせとも〳〵比島に馳付しに姑を卸すやいなや又見出さんと
るゆへ名前居所をもいろ〳〵と尋ねけれとも名の有者に
あらすといひすてゝ又もとの橋のことく走り行ぬ定めて諸人
を助る志の人物にて有しならんと同道したる女子語りぬと
そ我か家内もあらんをいかなる者そ尋ね糺して公達し度
隠徳者也けりと床しかりし
〇大震の後吸江の渡し舟に乗組種々の雑談を聞し中に