翻刻
さして高き所にはあらさるか溢かりしとそる潮此所斗はひきくて
社地へは入らすして一人も恙なく浜田の家は悉
流失しつるに不思議なる事也とて其社地に集りし者の
中に大工有しか材木町に来り直にかたりしと也
〇御畳瀬浦の漁師とも足摺山の鼻前に出漁して大浜の
磯にて津波にあひ落入波に引込れて海底に至り船底も
巖石に当り砕るとおほゆ其時は四方波の中にて山なと見ゆると
いふ事なし既に溺死とおもひしに再浮上られて命を拾ひ
しとそ上陸して其事を浦人に語りけれは其磯は海底まて
八尋立所也といわれて又々身の毛よたちしと也
〇清水浦添の奥に在たる塩浜并塩家共潮入て廃絶す
とそ年来御国益に成かねたる御事なれは御再興はおほ
束なしと其浦役某かたりぬされは左に写す御浦奉行の
御趣意書も流失しつらんとゆかしくて予の筆記中より抄
出する也是谷氏の自筆の物にて横板に書額にして塩屋に
かゝりしと也惜むへし
塩浜根元之趣意
清水浦にて塩浜新に仕成候事は根元御国は海国にて候へ共
懸塩仕成のみに付御国内遣用不足にて毎年弐三万石は
他国塩買入来趣に付他国へこそ売出し不申共百里之