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翻刻
【紙面右側欄外】
天保十亥の年正月大新板
【紙面頭部欄外】
上【黒丸の中に白抜き字】
【見出し】
《割書:天保八年|酉のとし中の》 忘(わすれ)まい沼津(ぬまづの)「見(あい)+立(そ)」
《割書:めづらしい事|おぼへて置(おき)たい》
【本文上段】
わたしゆへに 白米壱升
そうどうおこり 四百文
何のこなたに 麦一升弐百八十文
引とらすやうな事 《割書:あづき弐百七十文|大豆弐百弐十文》
三がいにふみまよふ 朝昼夕三度
こそどうりなれ かゆのしのぎ
おも荷(に)はねた 毎日米やの札
間もやすまぬ 見てなきがほ
われもつゞいて 朝七ツおき切手もらひ
あとからこい 籾(もみ)ずり買
それか是かと 米屋見せ
よく〳〵ながめ よりぐひ
其 代(かわり)り【ママ】に身の廻りくし 四五六月
かうがいまで売はらひ だん〳〵高直
うき世わたりは 米麦しやうゆ
さま〴〵に よ見せ
かほが見たい〳〵 七月のすへ
かほが見たいわいャィ 新こく入の
ハテがてんのゆかぬ ぬか【糠】きらず【おから】の
まぜた喰物
此うへの悦びは 豊作きいた
ござりませぬ 九月頃
ムウト心のもくさん 百姓高持
しあんをきはめ 米屋
肴はほしか【干鰯】 諸方《割書:一ぜんめし》弐十四文
一疋なし はたご金壱朱アテ
そうあろう心底(しんてい) 塩壱升六十四文
しごく尤じやが 《割書:ぬか 六十四文|きらず玉【注①】 百もん》
ヱゝかたじけない〳〵 諸方大家
せぎやう
しゆみ【須弥】大海に 御救 国恩(こくおん)
まさつたる
【注① おからを球形に丸めたもの】
【本文下段】
こけつまろびつ 二月大火
はしりゆく
なにかのやうすは 何かなしに堺八尾
道にてきかん ■【原ヵ】野辺《割書:マ|デ》にげた人
さま〴〵るろういたす人 □保山でにぎり
□しくふたの
宵(よひ)月夜で ばんばで
あんどはいらぬ 野じゆく
たのみかけられ やけのこり
ぜひなくも しんるい
ゆるりとちゞかまつて れき〳〵の出家たち
御寐(ぎよしん)なりませ 出入内へとうじ居候
どうやら爰(こゝ)に根がはへた せんばやける
なすびなんきん畠(はたけ)
そう聞まして申 質□□ら
やうもござり升□ □□がへ
どなたもさやうに 香の物□
おつしやります □□□弐朱
一日ぐらしに 町おそら豆□□見せ
日をおくる 《割書:げんこどりもち【注②】|なんきん小ざらうり》
それをきひてとんと 酒
おもひ切りました 三百六十四文
かげに巣(す)をはり 諸方そうか【注③】
まちかける おびたゝし
何のびやうきでは 悪病はやり
思□□よらず
何ゆへに此ありさま 知因(ちいん)【「知音(ちいん)」】近づきの
おちた人
何 ̄ン のいんぐわで 毎日はし〴〵
此やうななさけない こじきの荷つくり
南無阿みだ仏〳〵〳〵 悪病ゑきれい【疫癘】
餓死(がし)かずしれず
【注② 江戸時代、街道などで売った、一個五文の餅】
【注③ 総嫁。 江戸時代、京阪地方で路上で客を引く最下級の売春婦をいう語。】
【紙面左側欄外】
後の年世なをり見立 下【黒丸に白抜き字】之分 ̄ニ御座候
追加 有難やかゝる可美のなかりせばつくりし罪のいつか消へなん