翻刻
【右】
ときは。みづから其(その)悪瘡(あくそう)なるを恥(はぢ)て人にかたらず。ひそかに
同(どう)【「・」 左ルビ】、氣(き)相求(あいもとむ)の友(とも)にのみ談(かた)り合奇薬妙方(あい◎きやくめいほう)ときけば
みだりに服(ふく)し。或は庸醫(へたいしや)にゆだね。急迫(きうはく)【「イソギマハゝル」 左ルビ】にいやさん
ことをもとむ。醫(いしや)も亦(また)眼前(かんぜん)の功(こう)を見せ利を求(もとめ)むと。
己(おのれ)が得(とく)とおぼえもなき峻剤(つよきくすり)をもちゆ。是すこしの
火災(てあやまち)を外(ほか)へしらせず。家内(かない)の者(もの)にて消止(けしとゞ)めんと
して。かへつて大火災(おふくわじ)となすにをなじ。をろか
なるのいたりなり。貝原先生(かいばらせんせい)の伝。諸病の甚
【左】
しくなるは。おほくは初發(しよほつ)の時薬(くすり)ちがへするに
よれり。病症(びやうしやう)にそむける薬を用ゆれば治(ぢ)しがたし。
ゆへに療治(れうじ)の要(かなめ)は初發にあり。病おこらばはやく
良醫(よきいし)をめねぎて治(ぢ)すべし。病ふかくなりては治し
がたし。扁鵲(へんじやく)が齊候(せいかう)に告(つげ)たるが如(ごと)しといへり。
よろずの事も始(はじめ)につゝしまざれば。後悔(のちぐえ)おほし。
○最初(さいしよ)下疳(げかん)を生(しやう)じ。次に便毒(べんどく)となり。それより
いろ〳〵に変(へん)じ。軽(かろ)き時は。頭痛(づつう)。耳鳴(みゝなり)。筋骨疼痛(すじほねいたみ)。